第7章 血ぬられた迷宮
真砂子はゆっくりと立ち上がると、あたし達を通り過ぎて扉の方へと向かっていく。
「真砂子?どこ行くの?」
「一人じゃダメだよ、あたし達も……」
「来ないで。外の空気を吸いたいだけですわ。廊下にいますから、だから来ないで」
「でも!」
「一人は危ないよ!」
「……結衣、麻衣。……やっぱり嫌いよ」
それだけを言うと真砂子は外へと出てしまった。
まさかの『嫌いよ』発言だったか、傷付くことは無かった。
あたしと麻衣は顔を見合せる。
そしてあたしは小さくだが苦笑を浮かべた。
「特別扱いだって。まさかそんなふうに見られてたなんてね」
「うん……そんなふうに見られてるなんて思ってなかったや」
二人してベッドに転がる。
「……なんだあ。真砂子もふつーの女の子だよねぇ。ナルに嫌われたくないって必死なんだ」
「普通の可愛い女の子だよねぇ。恋する女の子」
「そりゃ、そうだよねぇ。好きな人に嫌われたくないもんねぇ」
「麻衣は喧嘩売ってるよねぇ」
「う、うるさいなぁ……。そういえばさ、二人揃って同じ夢は見たけど、ナルの夢は見なかったよね」
「ああ……そういえば」
ナルは確かに夢に出てこなかった。
それを不思議に思っていると、麻衣はなんだか寂しそうにしていたので苦笑する。
「あー、さっぱりしたー!おまたせ」
暫くすると綾子が嬉しげにしながら出てきた。
「あら、真砂子は?」
「ん、廊下に──」
その時、なにか嫌な感じがした。
慌ててあたしと麻衣は部屋の扉を開けたが、そこには真砂子の姿がなかった。
「なによ、どうしたの?」
「──……真砂子」
「真砂子!返事して、真砂子!!」
「どこに行っちゃったの。真砂子!!」
あちこち探したが、真砂子の姿はなかった──。
「どうして一人で行動させたんだ」
「……ごめんなさい」
「ごめんなさい……」
ナルに報告して、ぼーさん達が真砂子を捜しに行った。
あたし達はただ俯いて、綾子がそんなあたし達の背中を撫でる。
「おう」
暫くしてぼーさん達が戻ってきた。
「どうだった」
「ダメだな、そっちは?」
「見つからなかった。……こうなると、空白部分のどこかにいるとしか考えられないな」