第7章 血ぬられた迷宮
「ナルはあたし達のこと、特別バカにしてんの」
そうである。
ナルはあたし達を特別馬鹿にしていて、下に見ている。
そう思いながらあたしは苦笑を浮かべた。
「それと、あたしはナルのことなんとも思ってないよ」
「え……?結衣さんは、ナルのことお好きじゃないの?」
「うん。あたしが好きなの、ぼーさんだもん」
あたしの言葉に真砂子は目を見開かせる。
どうやら知らなかったようで、ただただ驚いたようにあたしの顔を見ている。
自分で口にして少し恥ずかしい。
そう思ったが、誤解が解けるならいいやと思いながら話した。
「あたしね、初めてぼーさんに会った時から好きなの。所謂一目惚れってやつ。だからあたしのことはライバルと思わなくていいよ。ナルだってあたしを特別扱いしてないし。馬鹿にはしてるけどね」
麻衣は隣で笑い、あたしも笑う。
そんなあたし達を見て真砂子は不思議そうにしていたが、少し何処か納得したような表情をしていた。
「貴方って、趣味が悪いのですね」
「なんだと!?」
「それは分かる。結衣ってば趣味悪いよね〜」
「アンタらに言われたくないやい!アンタらも十分に趣味が悪い!!」
なんて言いながらもあたしはベッドに腰掛けた。
「話は逸れたけどさ、だいたいさ、真砂子のほうこそ特別扱いされってるっしょー?」
「……あたくし?」
「そ、ナルの弱味握ってるでしょ。どんな弱味なのかなー。教えてくれるわけないよねぇ?」
「当たり前ですわ。貴方達に言ったりしたら、あたくし本当に嫌われてしまいますもの」
「へ」
「嫌われる……?」
どういう事なのだろうか。
そう思っていると、真砂子はほんの少し悲しげに俯いた。
「……あたくしがナルの弱味を知っているかららナルはあたくしを嫌ってますの」
「……どゆこと?」
「ナルが真砂子を嫌ってる……?」
「……ナルはプライドがお高いんですもの。誰かに弱味を握られてるのが我慢できないんですわ。だからあたくし嫌われてますの。人に話したりしたら今以上に嫌われてしまいすまわ」
なんだか納得出来る話である。
ナルはプライドが酷く高いから、確かに人に弱味を握られるのは嫌そうだ。
「でも、だからってべつに真砂子のこと嫌ってはいないと思うけどなあ」
「あたしもそう思うよ」