第7章 血ぬられた迷宮
「埃だらけで気持ち悪いのよ。お願いねぇ♡」
「早くしてよー!」
「まったくもう!」
麻衣と共に文句を言いながらも、あたしは荷物を鞄に収めてからチャックを閉める。
ふと真砂子の方を見ると、彼女は既に荷物を纏め終えていた。
「あ、真砂子支度すんだ?」
「終わったのー?真砂子も」
麻衣と共に声をかけたが、彼女はそっぽを向く。
「真砂子?」
「どうしたの、真砂子」
「あたくし、貴方達なんかに呼び捨てにしてほしくありませんわ」
その言葉にあたしと麻衣は顔を見合わせる。
「……あのさあ。なんであたしらをそこまで嫌うわけ?理由を言ってよ、理由を」
麻衣の言葉を真砂子は無視する。
そこまでしてあたし達が嫌いなのかと、流石に怒りを覚えた。
「真砂子!」
「あんたね──」
「……どうして、ナルは貴方たちだけ呼び捨てにするんですの!?」
真砂子の叫び声にあたし達の動きが止まる。
「あたくしや松崎さんは苗字で呼ぶのに、どうして貴方達なんかが特別扱いなんですの?」
「どうしてって……」
「使用人件奴隷みたいなものだからじゃないの?」
言ってて腹が立つ。
ナルはそれぐらいにしか見てないというのは分かっているが、苛立つ。
「だったら苗字を呼び捨てにすればいいでしょう?」
「そりゃ、そうだけど」
「それはナルに言ってくれ……」
「さっきだって、随分仲良さそうに喧嘩してたし」
「ハァ!?」
あたしと麻衣はまた顔を見合わせる。
もしかしてだが、真砂子はあたし達にヤキモチを妬いてるのではないだろうか。
「……もしかして、真砂子妬いてたの?」
麻衣の言葉に真砂子の表情が変わる。
顔を真っ赤にさせていて、それがなんとも可愛らしくてついつい笑ってしまった。
それも麻衣と同時に吹き出すように。
「な、なんですの」
「ご……ごめん。真砂子って結構可愛いよね」
「うん、可愛いよ」
「失礼な言い方をなさるのね」
「だって妬いてたんでショ?」
「やっ……べつに妬いてなんか……」
にっこりと微笑むと、真砂子はそっぽを向いてしまう。
「……あのさー、あたし達に妬くだけ無駄だと思うよ。特別扱いいっても悪いの方の特別だもん」
「そうそう、麻衣の言う通りだよ」