第7章 血ぬられた迷宮
「生身の人間が壁を通り抜けたりできない以上、空間をねじ曲げるかどうかしたとしか思えない。それがどれだけの力を必要とするか分かるか?奴は恨みを晴らしたくてさ迷ってるわけじゃない。この世の未練や心残りがあるわけでもない。ヤツはただ単に生き延びたいだけなんだ。その為に獲物が必要だから狩っている。これはもう亡霊とはいわない。『鬼』『悪魔』『妖怪』なんでもいい。そういう化け物なんだ」
『悪魔の子(ドラキュラ)』ヴラド──浦戸。
やはりアイツは悪魔みたいなものなんだ。
「ぼくは幽霊を狩る方法は知っていても、化け物を狩る方法は知らない。それとも、この中にヤツを狩る方法を知っている者がいるか?」
ナルの問にあたし達は黙る。
そしてぼーさん達を見ると、彼らは首を横に振るだけ。
「……おれにはできん。壁に人間を通すような力を持ってるヤツをねじ伏せるほどの能力はない」
「アタシにも無理。条件が悪すぎるもの」
「……ボクもです。神の栄光を恐れない者を封じることはできません」
「……そんな……」
言葉が出なかった。
この中に化け物を狩ることが出来る人間はいないのだ。
それほどアイツは化け物であり、悪霊と呼べるほどのものでは無いということだ。
「一つだけ、ヤツには弱点がある」
「え?弱点?」
「この家から出ることができないんだ」
「それが……?」
「家から出ることが出来ないから、なんなの……?」
あたしと麻衣は不思議そうにする。
家から出られないからというから、一体なんだろう。
そう思っていると、ぼーさんが声を上げた。
「──そうか。家の周囲は安全だと森まどか嬢も言ってたな。浦戸は生前この家の中で殺戮を繰り返した。それでヤツは今も家そのものに拘ってんだ。捕らわれてるといってもいい。だから家の外まで人を狩りにはいけないんだ」
「おそらく」
「なるほどな。だったら結衣と麻衣も除霊できるぜ」
「ほあ!?」
「なんだって!?」
あたしと麻衣にはとてもじゃないが幽霊を除霊できる力は持ってなんかいない。
それなのに除霊出来るとは一体どういうことなんだと、ぼーさんを見る。
「カンタンだよ。家を燃やせばいいんだ」
「燃やす!?」