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ハツコイソウ【ゴーストハント/滝川法生】

第7章 血ぬられた迷宮


その事に怒りを感じた。
何故、仲間を必死になって捜そうとしないのだろうか。
なんて思っていた時、五十嵐先生が声をかけてきた。


「ま、待ってください博士。お願いです、お力を貸してください」

「五十嵐先生……」

「どうか……どうか鈴木さんを捜してくださいまし」


五十嵐先生はデイヴィス博士の手を握る。
縋るようにしながら、必死になんどもお願いしていた。


「お願いします、デイヴィス博士!」


その手をデイヴィス博士が振り払い、よろけた五十嵐先生を慌てて麻衣と共に支えた。


「ワ……ワタシはちがいます。ワタシはデイヴィスちがいます!」

「……は?」

「名前はレイモンド・ウォールです。博士ではないです!西、いったのもウソです。そう言っただけです。南サンが『デイヴィスといえ』といっただけです」

「じゃ、じゃあ……偽物ってこと!?」


あたしが思わず叫ぶと、デイヴィス博士もといレイモンドさんはなんども頷いた。


「ワタシ帰ります。もう帰ります!」

「あっ、おい、きみ!待ちたまえ、おい!」

「か、会長!」


やっぱりそうだったのだ。
胡散臭いとは思っていたが、やはりデイヴィス博士は偽物。
あたしはため息を吐き出しながら、南さん達が消えていった扉の方を見る。


「そんな、そんな……!」


五十嵐先生は今にも崩れ落ちそうになっていて、ぼーさんの方を見ると魂が飛び出ているのではないかと言うぐらい、ショックを受けていた。


「五十嵐先生、とりあえず座りましょう」


今にも崩れ落ちそうになっている五十嵐先生をとりあえず、麻衣と共に椅子に座らせた。


「五十嵐先生。先生もお帰りになったほうがいいと思います。この家は危険だ。出た方がいい。ぼくらも引き上げます」

「「え!?」」


ナルの突然の言葉にあたしと麻衣は驚きの声を上げる。


「引き上げるって、帰るってこと!?」

「そうだ」

「ちょ、ちょっと……他の失踪した人達はどうするの!?ほっぽって帰るつもり!?」

「全員死んでいる。捜しても望みはない。家の中は捜しつくした。失踪者は閉ざされた部屋の中にいるとしか思えないし、実際そうだった。浦戸がどうやって犠牲者を壁の向こうに連れ込んだのか分からない」


ナルは淡々と言う。
相変わらず感情が乗っていない声である。
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