第7章 血ぬられた迷宮
五十嵐先生は何故か関心したような表情をしている。
どうしたのだろうかと首を傾げていれば、五十嵐先生は声を弾ませながらデイヴィス博士へと目線を向けた。
「お聞きになりました?すばらしいわ!博士の予言通りでしたわね」
「どういうことですか、五十嵐先生?」
「さっき、博士が予言をなさったんです。失踪者の行方をお聞きしたら西の方にいるとおっしゃって。流石は博士でいらっしゃいますわ」
「……先生。お分かりになっておられますか」
関心して少しはしゃいでいるような感じの五十嵐先生に、ナルが冷たい口調で言い放つ。
「二月に失踪した人間が死んでいる以上、他の失踪者にもほとんど生存の望みはないと思われます」
ナルの淡々として冷たい口調に、五十嵐先生の顔が強ばった。
「──……鈴木さんは死んでいるとおっしゃるの……?」
そう、五十嵐先生は知らないのだ。
昨日鈴木さんが霊となって呼び出しに応じたことを。
「鈴木さんに限らず、厚木さんと福田さんもおそらくは」
「で、でも……二月の失踪は……あれは随分前の事でしたでしょう?きっと道に迷って……」
「あの部屋に迷い込むことはできません。外から完全に密閉されていました。ぼくらも壁に穴をあけて入りました。つまり迷い込んだりできる場所ではないんです」
「そんな……」
ナルの言葉に五十嵐先生の顔が青ざめていく。
すると井村さんが勢いよく椅子から立ち上がった。
「……わしは帰るぞ!失踪者どころか自分の命が危ういわ!」
「井村さん!」
井村さんはそう言うが、おそらく彼は狙われないはず。
だって浦戸が求めているのは若い人だけだから。
「あの、会長……わたしたちも帰ったほうが」
「え、あ……ああ、そう、そうだな。さ、博士」
井村さんに続き、南さんたちまで帰ろうとしていた。
それを麻衣とあたしが呼び止めた。
「ちょっと、待ってください!」
「帰るって、貴方たちは厚木さんと福田さんを捜してあげるつもりはないんですか!?」
「二人とも行方不明なんですよ!?」
「そ……そりゃ捜して無事な姿が見つかるならそうしますがね。このままじゃ被害者が増えるだけでしょう?」
この人は自分の命が優先なんだ。
自分の仲間を捜すつもりなんて全くもってないのだ。