第1章 悪霊がいっぱい!?
「で、工事は中止。去年体育館を立て直すんで工事が再開されたんだけど、あの状態のままでストップしちゃったの。……前も同じことが起こったのよ。工事のトラックが暴走して授業中のグラウンドに突っ込んで生徒が死んだり……」
徐々に声色が静かになるミチルの怪談話に、全員が息を飲んだ。
「それとね先輩が夜ね、旧校舎の道を通ったら……」
人影が見えたんだって……
その言葉に全員が目を見開かせる。
「……消すよ」
カチッと音を鳴らしてライトの明かりが消される。
外から雨が降っている音だけが聞こえてくるほど、辺りは静かだった。
「いち……」
「にぃ……」
「さん……」
「し……」
「ご……」
「ろく」
知らない、聞き覚えのない声が聞こえた。
そう5人がはっきりと分かった瞬間、とてつもない悲鳴が視聴覚室に響き渡る。
「やだーっ!」
「出たーっ!出たーっっ!!」
「やーっ!」
パニック状態になっている中、音を鳴らして視聴覚室の明かりが付けられた。
全員が心臓の動きを早めながらそちらへと視線を向ければ、そこには全身黒ずくめの少年が立っていた。
「い、今『ろく』っていったのあなたですか……?」
「そう……悪かった?」
その言葉に全員が安堵の息を吐き出した。
幽霊ではなく、生身の人間の言葉だったと言うことに安心してしまったのだ。
「なーんだあ!腰が抜けるかと思ったあ」
「それは失礼。明かりがついてないんで誰もいないと思ったんだ。そうしたら声がしたからつい……」
薄く微笑む少年は誰が見ても『イケメン』はたまた『美少年』と言われる程の容姿をしていた。
そのせいなのか普通なら怒ってもいい所、ミチルたちはコロリと態度を変えて少年へと声をかける。
「そんなあ!いいんですう♡転校生ですか?」
「そんなものかな」
「何年生ですかァ?」
「今年で十七」
「じゃ、あたしたちより1年先輩ですね」
少年の答えに結衣と麻衣は眉を少しだけ寄せた。
(普通なら『二年生』って答えるよね?なんで『今年で十七』なんて変な答え方したんだ?)
結衣はチラリと麻衣の方を見れば、彼女も同じことを思ったようで『変だよね』という感じでこちらを見ていた。
(にしても皆はしゃぐなぁ。確かに顔はいいけど……好みじゃないな)