第1章 悪霊がいっぱい!?
結衣の好みはもっと大人で、軽薄そうな見た目の人が好みである。
趣味が悪いとよく言われるが、生憎そういう趣味なのだ。
「ねえ、結衣。なんかコイツひっかからない?」
「麻衣も?あたしもそう思った」
双子は少年にひっかかりを覚えていた。
何が……と言われたらイマイチ分からないが、何かが引っかかる。
「あたしたち怪談してたんです」
「ふうん……仲間に入れてもらえるかな」
「どーぞ、どーぞ♡あっ、お名前なんていうんですかあ?」
「渋谷」
「渋谷先輩も怪談好きなんですか?」
「……まあ」
ニコッと微笑む『渋谷』と名乗った彼に、ミチル達は黄色い悲鳴をあげる。
だが結衣と麻衣はその微笑みに引っかかりを覚えた。
(ん!?この男……)
「……渋谷さんとやら」
麻衣が声をかけると、渋谷と名乗った少年は麻衣へと微笑んでみせる。
「なにか?」
その笑顔に双子は目を見開かせて、引っかかりを覚えた理由が分かった。
(コイツ、目が笑ってない!ニコニコしてるけど、本当はニコニコする気がないんだ!絶対裏がある!)
渋谷の目は全く笑っていないのだ。
笑っていなければ、何処か底冷えしそうなほどに冷たいものを感じる。
「麻衣、コイツ目が笑ってない」
「うん……笑ってない。裏があるよこいつ」
コソコソと二人は話しながら警戒した様子で渋谷へと視線を向けた。
「渋谷さんと言いましたね。こんな所でなにしてるんですか」
結衣は警戒心を表にしながら聞けば、相変わらず目が笑っていないのに渋谷は微笑む。
「ちょっと用事があって」
「じゃあそれをすれば。あたしたちは帰りますから」
「もう怪談も終わりましたからね」
双子がそう告げると、ミチル達は抗議の声をあげた。
「結衣と麻衣ったら!気にしないでくださいね、センパイ。あっ、用事ってなんですか?あたしたちも手伝いまーす♡」
「あ、アンタら……」
「いや、テープのダビングだから。また怪談する時に混ぜてもらえるかな」
「じゃ、あしたの放課後!どうですか?」
「いいよ。どこで?」
「あたしたちの教室!1ーFです!」
イケメンの登場で浮かれているミチル達を二人は背中を押しながら教室から出た。
「ほら、帰るよ!」
「出るよ出るよ」