第7章 血ぬられた迷宮
余計な事を言うから。
やれやれと麻衣と溜息を吐いていると、真砂子の顔色が悪いことに気が付いた。
「……真砂子?」
「どうしたの?顔色悪いよ」
「……なんだか、嫌な気配がしますの。この家に来てから……ずっと。それに──血の臭いがする気がしますわ」
真砂子の言葉に、あたしと麻衣は顔を見合わせた。
玄関で微かに臭ったあの臭いは『血』なんだと今更気付いたのである。
「……あ」
「そうか……」
「なんだ?」
「うん……玄関のとこで一瞬だったけどね?麻衣と二人で嫌な臭いがしたのに気づいたの」
「あれ、血の臭いだったのかも……」
「はあ!?」
「こらこら。二人とも、そーゆーことは早く言えよ」
「だってー気の所為かもしれないと思って!」
「嫌な臭いはしたけど、それが血だとは気づかなかったんだもん!」
真砂子や麻衣と感じた血の臭い。
そして嫌な気配というものと、幽霊が出るという噂。
二人の行方不明者が出た古い洋館。
ここには
何かがいる──?
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ーthird person singularー
結衣と麻衣は、滝川と安原を連れて屋敷内の温度を測る為に歩き回っていた。
だが四人は屋敷内の様子を見て唖然としている。
「うわー……」
「わー……」
天井近くの壁に階段の跡、半分埋もれている扉、天井にある扉。
「シュールだのう……」
「変な家……」
「こういう感じの絵がありましよね」
「先代やら先々代ってのは芸術家だったのかなー」
法生は上を見上げながら歩いているせいで、足元をきんちと見ていない。
それに気が付いた双子は思わず叫んだ。
「ぼーさん!」
「あぶな……」
「おうわ!?」
法生の足元には大きめの出っ張りがあった。
彼はそれに躓いて見事に転けてしまい、双子は慌てて法生の元に駆け寄る。
「ぼーさん!大丈夫!?」
「だいじょうぶ!?」
怪我はしていないようで、法生は『なんだよ、このでっぱり』と自分が躓いた出っ張りを睨み付けていた。
「あーあ、もう。滝川さんてばはしゃいじゃって。仕事なんですからもっと緊張感を持ちましょうよ」
安原が爽やかな笑みで、なかなか痛いところを突く。