第7章 血ぬられた迷宮
「……あいつが所長代理ってのは正解だよな」
「ある意味ナルより怖いよ……」
「それはそう」
安原を所長にしたのは正解である。
三人はそう思いながら温度を計測し、書き込みながら部屋を移動していた。
次の扉を安原が開ける。
そして中に広がっていた光景に、四人はなんとも言えない表情になってしまう。
なにせ開けた先には部屋ではなく、幾つもの扉や窓が待ち構えていたのだから。
「──こりゃまたケッタイな部屋ですねぇ」
「迷子になりそう」
「何で扉の先にこんなにも扉が……」
これは迷子になると終わりだ。
結衣はそんな事を思いながら、あちこちの窓や扉を開けていく。
「妙な家ですよね。廊下はやたら入り組んでるし、こんな部屋はあるし。なんかRPGやってる気分だなあ」
「生ダンジョンってとこか。麻衣、結衣。ちゃんと部屋を順番にメモっとけよー」
「りょーかーい」
「らじゃ!」
それにしてもおかしな家である。
扉の数はとてつもなく多く、窓もかなり多い。
だが窓を開ければ壁だったりもして、結衣は少し気持ち悪さも感じた。
「……ここで人が行方不明になったの二ヶ月前だよね」
「大橋さんはそう言ってたね」
「その人が迷子になったままだとしたら、もう死んでると思わない?ウロウロしてて死体なんか発見したら嫌だなあ……」
「安原さん、嫌なこと言わないで!?」
想像しただけで結衣は鳥肌が立っていた。
だが安原の言葉は無さそうではなく、それが余計に怖い。
「んなワケないって。おれたちに見つけられるなら警察がとっくに見つけて──って、ああ!?」
「なに!?」
「ま、まさか……!?」
嫌な想像をしながら、双子は法生が覗いた場所を見た。
そこは窓の先になんと部屋があり、双子は引き攣った表情を浮かべる。
「うわあ……」
「……なんで窓のあっち側が外じゃなくて部屋なの?やっぱへんちくりんな家〜」
「よろい戸があるってことは増改築したときにこうなったんだな」
「変な増改築な仕方だねぇ……」
気味が悪い家である。
そう思っていると、設置していた温度計が測定し終えた合図の音を鳴らした。
「あ」
「どうだ?」