第7章 血ぬられた迷宮
「こちらの四人はぼくの助手です」
「谷山結衣ですっ」
「たっ、谷山麻衣です」
立て続けに名前を名乗り、頭を下げていく。
こういう自己紹介は初めてなのと、代理人とはいえ元内閣総理大臣の依頼ということで緊張してしまっていた。
そしてあたし達はナルを見る。
今回単なる調査員と言うのと、偽名を使うというのでなんと名乗るのかと見守る。
「──鳴海一夫といいます」
全くもって似合わない名前である。
「林興徐と申します」
リンさんの自己紹介にナル以外の全員が固まる。
「中国の方ですか」
「もとは香港です」
全員が驚きの声をあげた。
まさかのリンさんは日本人ではく、香港の人であったのだ。
ずっと日本人だと思っていたのと、何故こんなに日本語が上手なんだろうと驚きばかりだった。
「……これで謎が一つ解けたな」
「へ?」
「謎?」
「いやー、ずっと“リン”って呼び方は何処から来てるのかなーと思っててさ。苗字なのか名前なのか。名前だったらちょっと怖いなーとか」
確かにあの見た目で『なんとかリン』というのは不気味である。
思わずあとしと麻衣とぼーさんと綾子は笑い出してしまう。
「ちょっと、やめてよ!顔見るたびに思い出すじゃない!」
「な?おかしーだろ?」
「どうぞ、こちらへ」
コソコソと話していると、大橋さんにそう言われて慌ててあたし達は返事をしてから背筋を伸ばした。
そして大橋さんの案内で部屋まで向かうとなり、歩き出した時だった。
背筋が凍るような……そんな感覚と共に生臭いような臭いがした。
「二人ともどうしたー?」
「え、あ……ううん」
「べつに……」
あたしと麻衣は顔を見合わせた。
「ねぇ、結衣。さっき鳥肌がたたなかった?」
「立った……それに、なんか臭いが……」
「なにやってんだー、置いてくぞー」
「あ、うん!」
あれは気の所為じゃなかったはず。
麻衣も同じのを感じていたのだから。
案内されたのは大きく広く豪華な内装の広間だった。
そこには既に数人の人がいて、ナルとリンさんと安原さんは長テーブルに案内され、あたし達は少し離れた所のソファに案内された。