第7章 血ぬられた迷宮
「結構大きな事件になるだろう。依頼主は内密に処理したいようだが、マスコミが嗅ぎつければ大騒ぎになるのは目に見えてる。本来なら引き受けたくはないんだが、多少事情があってやむを得ない」
「それは大橋さんと仰る代理人の方からの依頼ではございません?あたくしの所にも先週依頼がございましたわ」
真砂子はお茶の間で有名な霊媒師である。
彼女にも依頼をするということはよっぽどの事だろう。
それにナルは『マスコミ』と言っていたのだから、それほど大きな事件なのだろうと考え込む。
「では、原さんとは別行動になりますね」
「もちろん、あたくしなりに協力はさせていただきますわ」
相変わらずだな……と苦笑を浮かべ、ぼーさんを挟んだ向こう側にいる麻衣を見る。
やはり少し苛立っているような表情をしているので、苦笑を浮かべてしまった。
「──ともかく、ぼくは極力目立つことは避けたい。そこで安原さんに身代わりをお願いすることにした」
「どーも」
「「あーーっ!!?」」
所長室から出てきたのは、前回の緑陵高校での関係者であった安原さんだった。
彼はにこやかに微笑みながらこちらにやってくるものだから、あたしと麻衣は驚いてしまう。
「ナルちゃんのマスコミ嫌いはわかるが、影武者を立てるほどのことなのか?」
「そうでなければ、わざわざ安原さんに来てもらったりしない。依頼主は他にも何人か霊能者を集めたようだが、その殆どがマスコミでもてはやされているが胡散臭い連中だ。ぼくはああいった連中とは関わりあいになりたくない」
「……ハン。自分が嫌な事を他人に押し付けるわけか」
「気が進まないなら帰ってもらって構わないが?」
相変わらずの口の利き方である。
どうして協力してほしいといいながらも、こう上から目線で偉そうなのだろうと思っていると怒号が飛んだ。
「……もうっ、どうしてちゃんとお願いしないの!人にものを頼む時にはそれなりの口調ってものがあるでしょう?何時も言ってるのに学習効果のない子ね!」
ナルにお説教をしていたのは森さんである。
あのナルにお説教する人物、しかも怒鳴る人間などリンさん以外で見たことがないあたし達は完全に固まっていた。
「ごめんなさいね!この子礼儀を知らなくて」
目が飛び出でるような感覚だった。