第7章 血ぬられた迷宮
「凄いですねぇ……ナルに言うこときかせるなんて」
「驚きです……」
今まで知り合った人たちの中で、ナルに言うことをきかせている人なんて見たことがない。
そんなことをしようとしてみれば、コテンパンにそんな事を二度と出来ないようにねじ伏せられるだろうと言うのに。
「そうかなぁ。ええと、あなた達……」
「あ、アルバイトの谷山麻衣です」
「同じくアルバイトの谷山結衣です」
「あら、姉妹?」
「双子です。二卵生の」
「あらあ!双子なのね!でも、わたしにしたら貴方たちのほうが凄いと思うけど。ナルとリンが人を雇うだけでも意外なのに。結構馴染んでるみたいじゃない」
馴染んでいるのだろうか。
なんて思っていれば、リンさんはいつの間にか機材室へと戻っていた。
賑やかななのは苦手なのか、もう自分は用がないと思ったのか。
あたしはリンさんが応接室でお茶をしたり、ソファに座ったりしているのを見たことが無い。
「……あのう、森さんってどういうご関係の方なんですか?」
「わたし?そうね、平たく言えば師匠かな」
「師匠……?」
「ナルにゴーストハントを伝授したのはわたしなの」
目を見開かせて驚愕した。
ナルは別に生まれた時からゴーストハントではないのは知っているが、師匠がいたとは思っていなかった。
しかもこんなおっとりとした女性が師匠なんて夢にも思わない。
だがふと思った。
そういえばあたしと麻衣も、ほとんどナルのことについては知らないな……と。
ー翌日ー
「ほんとに、帰ってきてる……」
「ほんとうに帰ってきたんだ……」
オフィスに向かえば、本当にナルがいた。
森さんは相変わらず花が綻ぶような笑みを浮かべているが、ナルはとても不機嫌そう。
だが、オフィスにいたのはナルだけではない。
お馴染みの協力者達であるぼーさんたちもいたのだ。
「あれ、ぼーさんだ。髪切った?」
「よくぞお気づきで。切ったよ」
「ところで、なんでみんなもいるの?」
「ナルちゃんに呼ばれたんだよ」
「で?どんな要件なわけ?」
お馴染みの協力者まで呼んだというと、仕事関係のお話なのだろうかと首を傾げる。
「事件の依頼を受けた。そこで全員に協力を頼みたい」
やはり……と思いながら、あたしはデスクから椅子を引っ張り出してぼーさんの隣に座った。