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ハツコイソウ【ゴーストハント/滝川法生】

第6章 禁じられた遊び


「……ぼーさん、あたしの事甘やかし過ぎる」

「年下を甘やかすのは年上の特権なんだよ」


ぼーさんの優しさが嬉しくて、あたしはまた泣けてきてしまって声を押し殺しながら泣いた。
そんなあたしをぼーさんは嫌がらずに、泣き止むまでそばに居てくれた。

こんな所が、優しいところがあたしは大好きなんだ。
日に日に大きくなっていく気持ちに、あたしは少しだけ苦しんでいた。

その日の昼近くぐらい。
あたしは機材を片付けながら会議室に戻れば、そこにはナルしかいなかった。
リンさんは車に機材を運んでいるのか欠席中。


「結衣か……。ぼうとしてないでさっさと作業をしろ」

「はいはい!くそっ……嫌味ったらしい上司」


本当に嫌味ったらしく憎ったらしい上司である。
だが、優しさもかねそなえているんだろうと思った。


「……ごめん、ナル」

「何が?」

「朝、酷いこと言って」

「別に酷いことを言われたとは思っていない。ただ子供がただを捏ねていると思ってただけだ」

「クソ上司……でも、なんで言わなかったの?人型に引き受けさせるから、生徒は大丈夫だって」


あれを最初から言ってくれたら、こちらも不安にならずに済んだし酷いことを言うこともなかった。


「人型に転嫁させるのは難しいんだ。いくらリンでも全員助かるとは断言出来なかった」

「だから、言わなかった?」

「ああ。だが……悪かった」

「…………はい?」


あの、ナルが今謝った気がする。
あたしは奇妙なものを見るような目でナルを見た。


「麻衣と同じで、結衣もすぐ他人にのめり込む。辛かっただろう。悪かった」

「……いーよ。お互いさまだよ。……生徒たちを助けてくれてありがとう、ナル」


あたしの言葉に、珍しくナルは小さく微笑んだ。
その笑顔に少しだけ驚いていると、ナルはすぐに無表情になってからあたしを見る。


「仕事。さっさと動け」

「……ナルは優しいと思いかけたあたしが馬鹿だった」


そして夕方になる前、あたしたちは緑陵高校から帰る支度も済ませてひっそりと帰ろうとした時に安原さんに呼び止められた。

彼は校長たちの代わりにお礼を言いに来たそうだ。
相変わらず人がなっているというか、緑陵高校の校長たちより大人な気がする。
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