第6章 禁じられた遊び
すると、いつの間にか来ていたナルが同じように人型に手を伸ばして欠けているものを拾い上げた。
「……ナル」
「ぼーさん」
「……はいよ」
「ジョンと人型の確認を頼む。それから松崎さん、原さん───麻衣、結衣」
「……はい」
「なに……?」
「手分けして壊れてない人型の名札を調べてくれ。名札にある名前を名簿で調べて安否の確認をとるんだ」
壊れた人型を見て、あたしはナルを見上げる。
もしかしたら、ナルは人型を身代わりにしたのではないかと思いながら。
その後、あたし達は壊れていない人型を確認してから次々とその名前が書かれている生徒へと電話をかけていった。
「───じゃあ、ヲリキリさまをやったことはないんですね?はい……はい、わかりました。ありがとうございます」
麻衣が電話を切ってから、嬉しげに笑いながら報告してくれた。
「……大丈夫だよ。なんともないって!」
「やった!」
「よかったあ……!」
人型は全校生徒の人数分あった。
ヲリキリさまをやった生徒に返るはずだった呪詛は全て、人型が引き受けてくれたのだ。
その結果、ヲリキリさまをしていた生徒の人型は壊れていて、していなかった生徒の人型は壊れていなかった。
(ナルは、最初からこうするつもりだっんだろうなあ)
麻衣はその後、ナルに報告してくると言って会議室を出て行った。
あたしはそんな麻衣を見送ってから、会議室を一人で出てから少し離れた階段に座りこんで泣いた。
「……良かった、よかったあ……」
怖った気持ちと不安だった気持ちが、やっと脱ぐわれた事と生徒たちが無事だったことに安堵した気持ちで涙が溢れてしまったのだ。
「また、泣いてんのか」
ふと、声がして顔を上げると目の前に苦笑しているぼーさんが立っていた。
「だって……」
「ホント、感受性が豊かだなぁ。すぐ感情移入して、傷つきやすくて泣いちまう」
「子供っぽいって言いたいの?」
鼻を鳴らしながら涙を拭っていると、ぼーさんは首を横に振りながらあたしの横に座る。
そしてあたしの肩を抱き寄せると、自分の胸元にあたしの顔を押し付けた。
「いい子だなって思ったんだよ」
「……いい子は、ナルに酷いこと言わない……」
「仕方ねえよ、あれは。何も言わなかったなナルが悪ぃ」