第6章 禁じられた遊び
叫ぶ麻衣を階段に座らせたぼーさんは、麻衣の頬を両手で軽く叩いた。
「ナルを信じろ。ナルがおれたちの期待を裏切ったことがあるか?」
「だって……」
「あるか?」
「───……ない……」
「だったら信じろ。大丈夫だ」
「でも」
「あの中には安原少年だっているんだ。おれが心配じゃないと思うのか?」
ぼーさんの優しく力強い言葉に、麻衣の瞳から涙が溢れだしていた。
「……うん……」
「……いい子だ」
あたしは麻衣に近付くと、頭を撫でてあげる。
すると麻衣はあたしに勢いよく抱きつき、押し殺したように泣き声をあげた。
そんな麻衣を落ち着かせるように、宥めるように背中を優しく撫でる。
「大丈夫だよ、麻衣。大丈夫」
そう言ってるあたしも、ナルに『人殺し』と言いそうな気分になっていた。
ぼーさんの『ナルがおれたちの期待を裏切ったことがあるか?』という言葉がなければ、きっと不安な気持ちが大きかったはず。
そして、麻衣を落ち着かせなきゃという気持ちがなければあたしはナルにもっと酷い言葉を浴びせていただろう。
自分は麻衣の『お姉ちゃん』という思いがなければ、踏みとどまれていない。
(……冷静でいなきゃ。あたしは、お姉ちゃんなんだから)
数分経った頃だろう。
麻衣の背中を撫でながらことが終わるのを待っていると、会議室の扉が開いた音と、話し声が聞こえてきた。
「……おわったの?本当に!?」
「ああ」
ナルの言葉を聞いたあたしと麻衣は顔を見合せてから、勢いよく階段を降りていく。
「結衣、麻衣!!」
ぼーさんの制止する声が聞こえたが、それを無視して体育館まで走った。
静まり返っている体育館に不安な気持ちを抱きながらも、麻衣と共に勢いよく扉を開けて唖然とした。
「……どうした。いったい、どうなって───」
後を追いかけてきたぼーさんは息を切らせながら、体育館を見て同じように唖然としていた。
体育館の中には人型が散乱していた。
名前が書かれている人型が恐らく百以上ある。
「───これ……人型……?」
「こんなに、いっぱい……」
「だって、さっきは確かに生徒が……!」
一つの人型に手を伸ばし、それを拾いあげようとすると手の部分が落ちてしまった。
「あっ……」