第6章 禁じられた遊び
あたしは麻衣の後ろ姿見て、その場で俯く。
きっと止めに行ってもナルは聞いてはくれない……それは麻衣にだって分かってるはず。
「止めに行かなくていいのか?」
ぼーさんがあたしの頭を撫でる。
「止めても、麻衣はなかなか言うこと聞かないから。それに麻衣も止めに向かっても、ナルが止めないのは分かってるはずだよ」
麻衣は頑固である。
姉のあたしと喧嘩をしても、頑固過ぎてあたしが折れることが多々あるほどだ。
今止めても意味が無い。
それでもナルを止めたい気持ちはあたしにも分かる。
「ナルは残酷なこと言うよね……」
「おれはてっきり、お前もナルに食ってかかると思ってたよ」
ぼーさんの言葉に、あたし苦笑する。
「そりゃ、あたしもそうしたかったよ。でも、あたしはお姉ちゃんだから……」
麻衣の前ではちゃんとしたお姉ちゃんでいたい。
だから同じように食ってかかり、騒いでいるのは駄目な気がしたのだ。
「昔からそうなの。言いすぎたり、やりすぎる麻衣を止めるのはあたしの役割なのは」
「……そっか。偉いな、結衣は」
ぼーさんはぐしゃりとあたしの頭をもう一度撫でた。
あの後、麻衣は会議室に戻ってきたがナル達は既に居なかったそうだ。
リンさんの車も無くて、どこかに行ってしまったらしい。
夜になってもナルたちが帰ってくることはなかった。
一度オフィスに連絡してみたが、オフィスにも戻っていないようで連絡が付かなかった。
「結衣、麻衣はどうしたのよ」
「階段の所……」
「そう……」
オフィスに戻っていないらしいと伝えた後、麻衣はふらりと会議室を出て行った。
階段のところにいると言っていたが、そろそろ戻って来るように言った方が良いだろう。
夜は冷える。
風邪をひいてしまうだろうし……とあたしは椅子から立ち上がった。
「麻衣の様子見てくる」
「気をつけろよ」
「はーい」
会議室を出て、近くの階段へと向かう。
だがそこには麻衣の姿はなく、あたしは首を傾げた。
「……麻衣?」
呼びかけてみるが返事はない。
何処に行ったのだろうかと思いながら、ふと嫌な予感がした。
麻衣はもしかしたら、印刷室の所に行ったのではと。