第6章 禁じられた遊び
冷静に安原さんは頭を下げた。
何故ここまで冷静でいれるのか、あたしには分からない。
呪詛が返されば何が起きるのかわからないというのに。
「……松山は!?松山だけ守られて他の皆は守ってもらえないの!?この人だけ何の罰もなし!?そんなのズルいよ!」
「麻衣……!」
麻衣の言葉がヒートアップしそうになる。
あたしは思わず麻衣の肩を掴んで抑えようとする。
「どんな人間だろうと他人から殺されていい理由なんかない」
「みんなだって殺されていい理由なんかないよ!」
「誰でも自分のしたことの責任は負わなければならないんだ」
「だって、皆知らなかったんじゃない!」
「無知は言い訳にならない」
ナルの言葉は何処までも冷たかった。
彼の瞳も底冷えするかのように冷たく、残酷にさえ感じる。
「ナルは残酷なんだね……」
思わずあたしの口から言葉が零れる。
そしてナルを睨みつけていれば、彼は息を吐き出すだけ。
「そう思ってもらって構わない」
彼は本気で生徒に呪詛を返すつもりなのだ。
「……あたし、ナルなんて大っ嫌いだからね!」
麻衣は泣きそうな目でナルを睨んで、そう言い放った。
「馬鹿に嫌われるとは光栄だな。リン、準備を始める」
「はい」
ナルとリンさんは無言であたし達の横を通り過ぎて、会議室を出ていってしまった。
会議室には沈黙が流れる。
痛く苦しい沈黙を破ろうとしたのはぼーさんだった。
「……なあ」
「……わかってるもん。ナルが正しいってことぐらい分かってるもん。でも、だからってナルが言ってること全部に『うん』なんて言えないよ。馬鹿だって言われてもいいもん」
麻衣の瞳から涙が零れ落ちた。
そんな麻衣にあたしは眉を下げ手から、小さな身体を抱き寄せる。
「なんか……ちがうんだもん……」
麻衣の言う通りだ。
ナルの言っていることは正しいけれど、全てを『うん』と返事出来るものじゃない。
「仕方ないわよ。もうアタシたちに出来ることがないんだから」
「───……とめる」
「麻衣?」
「あたし、ナルたちを止めにいく!」
「とめるって……、どうする気よ?」
麻衣はあたしから離れると会議室から飛び出してしまった。
「麻衣!」
呼び止めるけれど、麻衣は止まらなかった。