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ハツコイソウ【ゴーストハント/滝川法生】

第1章 悪霊がいっぱい!?


巫女さんがあたしに食って掛かろうとした時である。
黒田さんから喉を鳴らすような笑い声が聞こえてきた。


「なによ」

「……わたしは霊感が強いの。霊を呼んであなたに憑けてあげるわ……」

「く、黒田さん……?」

「黒田さん!」

「強いんだからね……本当に」


黒田さんの瞳は澱んでいるような、底冷えするようなもの。
思わずゾクリと背筋が凍りそうになり、アタシは息を飲んでしまう。


「ニセ巫女……今に後悔するわ……」

「黒田さん!」

「ちょ、黒田さん!?」


彼女はあたしと麻衣の声なんて聞こえていないかのように、ふらりと何処かへと行ってしまった。


(それにしても、あの人……けっこう危険な目してなかった?)


脳内では黒田さんの『今に後悔するわ』という言葉が蘇っている。
そんな言葉を消すように首を横に振れば、麻衣がナルちゃんへと声をかけた。


「ねっ、ねぇナルちゃんっ。今日はあたし達なにをすればいいの?」

「そ、そうだ!ナルちゃん、なにすればいいの?」


声をかけると、ナルちゃんは何処か驚いた様子であたし達の方を振り返る。


「今、なんていった……?」

「「へ?」」

「おまえ達、『ナル』っていわなかったか?」

「え……あっ!?」


ずっと心の中でや麻衣と『ナルちゃん』と呼んでいたせいで、つい言ってしまった事に気が付いた。


「ごめんっ、えとっ……」

「どこで聞いた?」


ナルの言葉に、あたしと麻衣は固まる。
怒られてしまうのでは……と思っていたが、そうじゃない様子。
ならもしかして……とあたしと麻衣は顔を見合せてニヤリとした。


「ひょっとして『ナル』ってゆーんだ、ニックネーム!」

「なーんだ!慌てて損した!ニックネーム、『ナル』なんでしょー!ナルちゃん!」

「いやーっ、やっぱりねー。誰でも思いつくんだ、“ナルシストのナル”ちゃん」

「……は?」

「んなことより、なにすんの?」

「……そうだな。反応がないから、次の手の打ちようがないんだが……結衣と麻衣の先輩の……」

「あー呼び捨てー」

「呼び捨てにしたー」


まさか呼び捨てにされるとは思っていなかったし、名前を呼ばれるとは思っていなかった。
ずっと『谷山さん』か『君』か『お前』だったものだから。
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