第6章 禁じられた遊び
あたしと麻衣はいつの間に廊下に出たのだろう。
覚えていなければ記憶にもないので、二人揃って焦っていれば名前を呼ばれた。
「───麻衣、結衣」
聞き慣れた声が後ろからする。
麻衣と顔を見合せ振り返れば、そこにはいつの間にかナルが立っていた。
「ナル!」
「戻ってきたの?なんかあった?」
「リンさんと安原さんは?」
立て続けに質問すれば、彼は困ったように微笑む。
「ここは危険だ。麻衣と結衣は帰ったほうがいい……」
「え?」
「危険?」
気付けば、廊下が暗闇に飲み込まれていく。
そのことに驚きながら辺りを見渡した。
「……えっ、ええっ!?」
「なに、急に……!?」
「見てご覧。沢山の霊がさ迷ってる……」
ナルの言葉に瞬きをすれば、辺りに光が現れた。
その光は昨夜あたしと麻衣が見た夢の中に出てきた、あの人魂達。
こんなに沢山いるなんて……と思っていれば、麻衣があたしの袖を引っ張った。
「麻衣?」
「下、見て……」
麻衣に言われる通り下を見ると、足元に綾子と真砂子の姿があった。
彼女達は更衣室らしき場所にいる。
「あそこは……えっと、更衣室……かな」
「ボヤ騒ぎのあった……ん?」
ロッカーの隅に、何か火の塊のような何かがあった。
その塊は綾子が恐らくお祓いをしているのだが、それから逃げるようにして更衣室から出ていく。
何処に行くのだろうか。
そう思っていれば、あの塊は放送室へと入っていく。
「あそこは……」
「放送室だ。見てご覧」
塊は触手のような物を伸ばして、人魂を囲って取り込んでしまったのだ。
まるで飲み込むように。
「な、に……」
塊が大きくなった。
先程より一回り大きくなっていて、思わず手を口で抑える。
「嫌な光景だ。霊が互いに食いあって成長している。そして───」
足元に黒いものがあった。
思わず後ろに下がってしまう。
「あれは邪悪だ。危険だから麻衣と結衣は帰った方がいい」
「そんな……出来るわけないよ。あたし達だけ帰るなんて!」
「そうだよ。皆置いていくなんて出来ない!」
あたしと麻衣の言葉に、ナルはまた困ったように笑う。
これは恐らく夢なんだなと気付いた。
(じゃなきゃ、ナルはこんな風に笑わない……)