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ハツコイソウ【ゴーストハント/滝川法生】

第6章 禁じられた遊び





「真っ暗だ……」


何故か、真っ暗な世界にいた。
どこを向いても明るい場所なんて無くて、キョロキョロと辺りを見渡す。


「おっかしいなぁ」


あたしは今何処にいるのだろうか。
確か、麻衣と安原さんと一緒に機材のセッティングをしていたはずなのに……と頭をかく。

取り敢えず歩いてみよう。
そう思いながらしばらく歩いていれば、見慣れた後ろ姿があった。


「麻衣!」

「あれ、結衣。……ここ、何処かわかる?」

「分かんない。とりあえず麻衣の姿が見えたから来ただけなんだけど……」


二人揃って首を傾げる。
そして麻衣が『おかしいなぁ』と呟いた時、真正面から薄らと光が見えた。

一人の男子生徒がいた。
彼はあたし達には背中を見せていて、あたしと麻衣は顔を見合せてから彼へと近付く。


(生徒は帰宅してるはずなのになあ……)


安原さんみたいに帰ってない人がいたのだろうか。
不思議に思いながら近付いていれば、その男子生徒が小さく『クスクス』と笑っているのが聞こえた。

何かを見て笑っている。
首を傾げながら、フェンスに近付いてみれば正面には向かい側の校舎がある。


(校舎なんか見て、なにが面白いんだろう)


変なの。
なんて思っていれば、向かいの校舎の窓に何かが横切った。
それを確認したのと同時に、大量の光が飛んでいるのに気付く。


(あれは……人魂!?)


横から、クスクスと笑い声が聞こえる。
あたしと麻衣は顔を見合わせたが、二人とも顔が引き攣っていた。


「……ね、ねえ……?あれが何だかわかってるの……?」

「わかってるよ。だから楽しいんじゃないか」

「楽しいって……」

「何言って……!」


人魂なんか見てなにが楽しいんだ。
そう思っていれば、男子生徒があたし達の方へと振り返った。

淀んだ目をしている。
暗くて黒い瞳をした彼は薄く笑みを浮かべた。


「すごく、楽しい。これ以上愉快な気分なんてないくらいだよ」


誰だろう。
そう思った時、安原さんの言葉を思い出した。


『自殺した一年生が───』


「───あ、あなたもしかして……」

「さか……」



名前を呼ぶ前に目が覚めた。
あれは何時もの夢だったらしく、瞬きをしていれば横から寝息が聞こえてくる。


「……寝てる」
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