第6章 禁じられた遊び
「あ、でも……結衣さんの方がお姉さんぽいですね」
「あ、分かります?あたしが姉なんですよ」
「やっぱり。しっかりしてる所もあるなあと思ってたんですよ」
「その言い方だと、あたしがしっかりしていないと言われてるような……」
なんて喋っていた時、不意にあたしと麻衣が言葉を途切らせた。
そして扉の方へと視線を向けていれば、安原さんがほんの少し首を傾げる。
「二人とも、どうしたんですか?」
「……あ、ううん……」
「なんでも……」
一瞬、誰かに見られていたような気がした。
もしかしたら麻衣も同じだったのかもと思っていれば、隣でしゃがんでいた安原さんが立ち上がった。
「……さて!次は何処に行けばいいですか、親方達!」
「え、ええっと……『猫の鳴き声のする体育館』です」
「そこで同じようにマイクとかを設置ですね」
「じゃ、ちゃっちゃっと済ませましょう」
やはり気の所為だったのだろうか。
そう思いながら扉の方に歩いていけば、安原さんがにっこりと笑みを浮かべた。
「やっぱり夜の学校って不気味ですからね。ぼく、怖いの苦手なんですよー」
嘘くさい笑みである。
ナルと同じくらい良い性格しているかも……と思いながら教室を出ていく。
「ところで、親方ってなんですか〜?」
「さっき、あたし達を親方とか言ってましたけど」
「だって、ぼく立場的に弟子ですから。いやですか?じゃ、『親分』」
「いやいや、そーいうことでは……」
「あ、そーすると渋谷さんは大親分かな」
似合いすぎている。
あたしと麻衣は思わず吹き出してしまい、ゲラゲラと声を出して笑ってしまった。
「似合いすぎるよ、やめてよー!」
「ナルが大親分なんて!似合いすぎてやばい……!」
「なんですか。谷山さんたち緊張感ないなあ」
誰が笑わしたんだと文句を言いながらも、安原さんのお陰で少しだけ気分が楽になった。
あの誰かに見られた感じがしてから、少しだけ不気味で怖い気持ちがあったから。
「んじや、大親分に怒られないうちに片付けちゃいますか!」
「「ですね」」
ふと、また後ろから視線を感じた気がした。
慌てて振り返ったが、視線の先は暗い廊下が続いているだけ。
「……気の所為、かな」
多分、そうだ。
そう思い込むことにした。