第1章 悪霊がいっぱい!?
ナルの言葉に男の人と、あたしと麻衣はまたもや吹き出し、松崎と名乗った巫女さんはあからさまにイラッとした表情になっている。
「ああら!そう見えない?」
「すくなくとも乙女というにはお年をめされすぎと思いますが。そのうえ清純と言うには化粧が濃い」
男の人はついに我慢できなくなってしまったのだろう。
お腹を抱えて笑い出していて、あたしはその姿もタイプすぎて見つめてしまう。
(ナルのお綺麗な笑顔より、こうやって笑う人がいい……!)
あまりにも見すぎていたせいなのか、横から麻衣が肘であたしをつついてきた。
「見すぎ」
「うっ……」
「あなたは?」
するとナルは大笑いしていた男の人に声をかけた。
「松崎さんの助手というわけではなさそうですが」
「……冗談だろ。おれは高野山の坊主、滝川法生ってもんだ」
あたしは思わずギョッとした。
こんな軽薄そうな男の人がまさかの坊主さんだなんて、思ってもいなかったのだから。
「高野山では長髪が解禁になったんですか?」
「破戒僧」
「い、今は山を降りてんだよ!」
破戒僧だなんて初めて見たや。
と思いながらも、やっぱりタイプすぎて見すぎてしまう。
「んで、お嬢ちゃん達は?この坊やの助手か?」
「そーいうもんです。ね、結衣」
「へ?あ、あ、うん……」
「んー?姉妹かなんか?」
「双子でーす」
「似てねぇな」
「2卵性双生児なんでぇ」
あたしはどタイプすぎる人に緊張しているせいか、言葉が出ないので全て麻衣が受け答えた。
(軽薄そうなのもそうだけど、顔もタイプだなぁ。美形ではないけど、かなり整っているし……ひえええ、こんなタイプな人初めて会ったよ!)
なんて舞い上がっていたのが麻衣にバレていたのだろう。
また肘でつつかれてしまった。
「とにかく!子どもの遊びはこれまでよ。あとは任せなさい。校長はあんたじゃ頼りないんですってよ。いくらなんでも十七じゃあねぇ」
「そうそう。渋谷なんてぇ一等地に事務所構えてるってんで信頼してたのに、所長があんな子どもじゃサギだっていってたぜ」
「そうですか」
ナルちゃんは怒ったり不満げにすることなく、逆に興味なさげに機材を弄っていた。
普通ならばこう言われたら怒るところだろうに。