第6章 禁じられた遊び
何だか、一瞬ナルのようだと結衣は思った。
安原の放った言葉は嫌味が含まれているように感じる。
「あっ、そんじゃ松山になんか言われたんじゃねえのん安原クン。おれらのとこに依頼しにきちゃってさ」
「だいじょうぶです。ぼくは成績がいいから」
現生徒会長の安原はなんだか眩く感じる。
結衣は安原もなかなかいい性格をしていると思いながら、苦笑を浮かべて息を吐き出した。
「───日本中にコックリさんをやってるガッコウがどれだけあると思う?」
窓に背を預けながら、ナルはそう問う。
「……ああ。なぜうちの学校にかぎってこんな風になったのかってことですね」
安原の言葉で、結衣はナルの問にやっと気付いた。
確かにコックリさんぐらいなら色んな学校がしていると思うが、緑陵高校はおかしいと思える。
湯浅だってコックリさんをしていたが、あれは呪詛が原因だったから緑陵とはちがう。
「素人が降霊術をやったかといって、必ず霊を呼べるものじゃない。仮にコックリさんで浮遊霊を呼べたとして───その中にたまたま強いやつがいて害をおよぼす……というのも分からなくはない。しかしそれだけにしてはこの数は異常だ」
「まあな!」
法生と結衣はホワイトボードに貼られた図面を見る。
いくつも書かれた怪談話は数が多く、異常だと感じた。
「……ねえ、基本的な質問なんだけど。コックリさんてほんとに霊を呼べるの?」
「霊能者ならねえ」
「あたしも中学のときやったことあるんだよね。十円玉の上に指置くやつ。びっくりするぐらい動くし、結構いろいろ当たってたけど、それはなんかの?」
「あ、確かに。あたしもやった事あるけど、いろいろ当たってたよ?あたしは霊能者なんかじゃいけど……なんで?」
「なんスかね、先生」
双子の質問に法生は苦笑を浮かべ、ナルのほうへと視線を向けて助けを求めた。
そんな彼らにナルは呆れたように溜息を吐き出す。
「麻衣、結衣。机の上に指を置いてみろ。コックリさんの要領で」
「んえ?」
「う?こう?」
二人は言われた通りに指を机に置く。
「震えてる。動かすな」
「えー?」
「動かしてな……」
二人は『動かしていない』と言おうとして止めた。