第6章 禁じられた遊び
「ばっか、ちがうよ!だってあれは……」
「ヲリキリさま───?」
聞き慣れない言葉だった。
その言葉に、結衣と麻衣と法生は顔を見合わせると声を揃えて安原に聞いた。
「「「って、なに?」」」
「最近……ていうか二学期に入ってから流行ってるんです。ヲリキリさまとか権現さまとか……まあ、いわゆる……」
「あたし、持ってる!まだ使ってないやつ。ほら、これ!学校中ですっごい流行ってるんだよ」
女子生徒が一枚の紙を取りだし、それを麻衣が受け取る。
そして結衣に見せてから双子は瞬きを繰り返した。
鬼の文字が円を描き、その中に五十音と人のイラストに何か読みにくい文字が書かれていた。
だがそれは見た事のあるものだ。
「あれー?これ……」
「あれだよね……」
双子が顔を見合せていれば、法生が覗き込んで声を上げた。
「コックリさんじゃねえか!」
「だよねぇ……」
ヲリキリさまの紙は、コックリさんとよく似ていたのだ。
「ええっ!?」
法生の言葉に女子生徒達が驚きの声をあげた。
「ちがうよ!コックリさんはキツネを呼ぶんでしょ?ヲリキリさまは神様をよぶんだよ。恋愛とかよく当たるんだから!権現さまは……」
話の途中で法生はヲリキリさまの紙を握りつぶした。
二度と使えないほどに潰していれば、女子生徒が『やだ!』と声を上げる。
法生は珍しいほどに真剣な表情だった。
その表情は怒りが滲み出ているのではないか……と思えるものでもある。
「……権現さま、花子さん、キューピッドさん、エンジェルさん。ぜんぶコックリさんの別名!」
その言葉に双子たちも驚いていた。
名前が違うから、まったく別のものと思えばそうではなかったらしい。
「名前がなんだろうとやってる事は同じ!おもしろ半分に霊をオモチャにしてることになるんだ」
「そんなあ!ヲリキリさまなら神様だから危なくないって……」
「そんなのはデマだ」
法生は歩き出すとゴミ箱に紙を投げ捨てた。
「霊を呼ぶのは素人でもできるが、帰すのには訓練がいる。二度とやるな!」
珍しく怒っている。
法生のその姿に結衣は思わず目を見開いてしまった。
普段温厚というよりも、優しげな彼がここまで怒っているなんて珍しい。