第6章 禁じられた遊び
法生の言う事もわかる。
ここまで抑え込まれて躾のような事をされていれば、確かに集団ヒステリーが起きてもおかしくはない。
結衣は顎を摩りながら眉間に皺を寄せる。
彼女はどうしても先程の坂内という少年の遺書の言葉が残っていた。
(ぼくは犬じゃない……)
遺書に書かれた言葉、それに同意する生徒たち。
この学校はとんでもない場所だ……と思っていると、ドアかノックされて安原が顔を覗かせる。
「次の生徒たちを連れてきました。『集団食中毒』の」
「あ、どうぞ。座ってください」
結衣は入ってきた男子生徒達を中に招き入れ、パイプ椅子へと座るように促した。
すると安原もパイプ椅子に腰掛けたのだ。
「よろしくお願いします」
「……安原さんも被害者だということですか?」
「そうです」
まさかの事に結衣は驚いた。
新聞の記事の内容の被害者の一人が安原だったとは……と。
「……それでは、事件の詳細を教えていただけますか」
「はい。事件が起こったのは、去年の十二月十八日、二時間目の授業中でした。朝からなんとなく教室の空気が悪いと思っていたんです。なんだが生臭いというか……そしたら二時間目が始まってすぐ、生徒の一人が……」
『気分が悪い?』
一人の生徒がそう教師に訴えた。
顔色も悪く、口を出て抑えていたが教師はそれを心配することは無かった。
『それぐらい授業が終わるまで我慢せんか!精神がたるんでるから体調を崩すんだ!』
教師はそう一喝する。
だが次々と生徒達は手を挙げて、具合が悪いと訴えた。
『先生。わたしも吐き気がするんですけど……』
『なにい?』
『───あの……わたしも……さっきから気分が悪いんです』
『あの……わたしも……』
『ぼくも』
『わたしも』
『ぼくもです』
『ぼくも』
異常な数だったそう。
そんな事態に教師は流石に眉を寄せて、慌てた様子を見せた。
『───な……な、なんだおまえら!ふざけるな!!』
罵声を浴びせた時、一人の男子生徒が無言で立ち上がると教室を出ていった。
『あっ、こら!おい、安原!連れ戻してこい!』
『は、はい』
教師に指名された安原は立ち上がると、追いかけようとしたがその場に蹲ってしまったらしい。