第6章 禁じられた遊び
その言葉に、結衣達は目を見張る。
自殺の遺書にしてはかなりのものであり、なんとも意味深であった。
「……意味が分かりますか?」
「わかる気がします。学校にいると自分でもそう思うことがあるから。髪の長さから持ち物の色まで決められて、言葉遣いや態度が悪いっていちいちチェックされて。これじゃ、まるで犬の躾みたいだって。それでわたし、坂内くんは学校を恨んでるのかなと思いました」
話し終えた女子生徒達は会議室から退出した。
その後ろ姿を見送りながら、結衣は先程の言葉を思い出す。
『犬ではない』
彼はどれほど学校に恨みを持っていたのだろうか。
結衣が眉を寄せていると、法生が息を吐き出して呟いた。
「───学校を恨んでる、ねぇ。分からないでもないな」
「どうして?」
「なんで?」
「気付かんかね、現役女子高生達?制服とか髪型とかさ」
「……あ」
麻衣はピンと来ていないようだが、結衣は女子生徒達が出ていった扉へと振り返る。
彼女達は驚くほどにキッチリとしている。
今のご時世では珍しいほどに。
「お見事なくらい、みんなキッチリしてすぎてんだろ。今どき茶髪の一人もいないってどうかね?」
「……そだね。ぼーさんの学生時代じゃあるまいし」
「綾子とかの学生時代でもないだろうしねぇ……」
「おまえの中のおれはいくつよ?あと結衣は綾子に殺されんぞ……」
このご時世、茶髪ぐらいはいるものだ。
結衣と麻衣の高校でもいるし、双子自体が茶髪である。
それなのにこの学校は見事なぐらいに髪の毛の色が統一されていて、髪の長さもそうだ。
スカートの丈、言葉遣いに態度。
全てが統一されている。
「学校の締め付けが相当厳しいんじゃないかって、ことだよ。校長や松山を見りゃ、教師の傾向もなんとなくわかるっしょ」
「あー、うん」
「松山なんか、子どもにプライバシーなんかないって言ってたぐらいだしぇ」
双子は思い出しただけで苛立ちが募ってくるのを感じた。
「学生のうちって学校が生活の大部分だからなぁ。そこでそんだけ抑え込まれちゃ、ストレスもすげぇんじゃねぇの?これが心霊現象じゃなくて、集団ヒステリーでもおれはナットクするね」
「……うーん……」
「集団ヒステリーかぁ……」