第6章 禁じられた遊び
誰もが呆然としていた。
だが現実に引き戻すかのように悲鳴が聞こえてきた。
どうやら騒ぎを聞きつけた他クラスの生徒たちが犬が姿を消していたのを見たようだ。
「……二人とも、だいじょうぶか?」
「う、うん」
「あたしもべつに。でも、この人が」
蹲っている女子生徒の足には噛まれたような跡がある。
血が流れていて、傷がとても痛々しい。
「保健室いこう、立てる?」
「あ、ぼくが背負います」
「……安原さん。怪談に関係した生徒を事件ごとにわけて会議室に連れてきてもらえますか」
あれだけの騒ぎがあったというのにナルは冷静である。
しかも怪我人を背負っている安原に淡々と言う姿に、双子はナルに『仕事バカ』と文句を言う。
「あ、あたし付き添ってくる」
「あたしは……他に怪我人いないか確認するよ」
麻衣は安原と共に保健室に、結衣は教室に飛び込むと他に怪我人がいないか確認した。
その最中に教壇に教師が座り、呆然としているのに気付く。
「……なにやってんだか」
呆れたように息を吐き出している結衣。
そして廊下で法生とナルは教室の中を眺めていた。
「───はー……。今度ばかりは教師も『見なかった』ってわけにいかねぇよなあ」
授業終わり、安原はナルに指示された通りに生徒を会議室へと向かわせた。
会議室には五人の女子生徒がいて、全員が不安げに表情を曇らせている。
「……教室に幽霊がでるので登校しなかったということですが。詳しく聞かせてもらいますか?」
「……はい。……あの……教室……って言っても、LL教室なんですけど。授業中自分が吹き込んだテープを再生してたんです。そしたら、変な声が聞こえだして……」
女子生徒が言うには、最初はヘッドフォンから聞こえる声に雑音が多いと感じていた。
徐々にその雑音は声になっていき、その声はまるで子供のようだったと。
嫌だなと思っていた。
すると足元に誰かがいると気付き、震えながら足元を見るとそこには子供がいたと。
「───先生に言っても信じてくれなくて……でもほんとうにいたんです!!」
女子生徒はついに泣き出してしまった。
そんな彼女を他の女子生徒が背中を摩る。
「他にそれを見た人はいますか?」