第6章 禁じられた遊び
「バッカじゃないのこのハゲ!生徒のまえに自分の性格管理しろっての!そーゆーのを『負け犬の大声』ってんだよ!」
「『遠吠え』だ、麻衣……」
法生の訂正に麻衣が固まる。
そんな妹に結衣はなんとかフォローしようとして、彼女の肩を両手で掴む。
「だいじょうぶ!多少馬鹿なほうが可愛げがあるよ、麻衣!」
「それフォローになってないぞ、結衣……」
次は結衣が固まる番だった。
きちんとフォローしたつもりだったのだ。
そんな固まる双子に安原が笑いだした。
「おもしろいなあ、谷山さん達って」
笑ってくれた方がとても有難い。
双子はそう思いながら固まっていた。
「ナルちゃんの毒舌がいつ飛び出すか楽しみにしてたんだけどなー」
法生はそんな双子に溜息を吐き出し、珍しく大人しかったナルへと視線を向けた。
「豚に説教しても意味がない」
毒舌である。
双子はそんなナルに青ざめ、安原は何処か関心したようにしていた。
「それじゃ、安原さん。授業が終わり次第関係者をここに……」
ナルの言葉を遮るかのように、廊下から悲鳴と激しい物音が聞こえてきた。
法生と結衣は慌てて廊下に飛び出せば、廊下の壁にへばりつくように女子生徒がいる。
廊下の前の教室から悲鳴が聞こえる。
尋常じゃない叫びと物音、そして恐怖で涙している女子生徒に結衣が慌てて駆け寄った。
「だいじょうぶ!?」
「どうした!?」
蹲る女子生徒と、泣き出している女子生徒。
結衣は泣き出している女子生徒の背中をさすり、法生が尋ねると引き攣った声で女子生徒が言葉を発した。
「───……いっ……犬が」
「……例の犬か」
ナルと法生は教室へと入る。
その二人に双子はギョッとした。
「ぼーさん、ナル!?」
「ちょっ……あぶないよ!」
教室に入ったナルと法生は目を見開く。
散乱した椅子と机、そして教科書などの中心に黒い犬がいた。
血走った瞳と口からこぼれ落ちる涎。
そんな黒い犬は叫び声をあげると、二人のほうへと突進していく。
「廊下にもどれ、ナル!」
法生とナルが廊下に出れば、黒い犬は教室から飛び出した。
そして黒犬は姿を消した。
「───き」
「消えた……」