第6章 禁じられた遊び
今はほとんど毎日のようにTVのニュースや新聞に出ている。
「えーと『集団ヒステリーか?また高校で怪事件』。授業中に犬に噛まれたって生徒たちが騒ぎ出したんだって。先生は犬なんか見なかったって言ってるんだけど、怪我人は出たって」
「ふーん。ねえ、ナル。なんで依頼断ったのさ。調査してあげたらいいのに」
「マスコミ沙汰になるような事件はさけたい」
「えー?なんでー?」
「有名になれるかもしれないじゃん!そしたら依頼もドカドカさー」
双子が交互に言葉を言っていると、事務所の扉が開いてドアベルが来客を知らせる。
「……あのー」
依頼人だろうか。
双子は慌てて振り返ると、そこには人の良さそうな眼鏡をかけている学生がいた。
年は結衣と麻衣と変わらない、それか一つか二つ年上の少年である。
少年は事務所の中を見て、少しだけ戸惑ったような遠慮しているかのような雰囲気を出していた。
「はいっ!ご依頼ですか?」
「はい、あの……緑陵高校の生徒会長をしています。安原修といいます」
噂をしていればなんとか。
まさかの緑陵高校の生徒会長が来るとは思っておらず、結衣と麻衣は顔を見合わせる。
取り敢えずと安原修と名乗った少年を中に招き入れ、ソファに腰掛けてもらう。
結衣は用意した紅茶が注がれたティーカップを安原とナルの目の前に置く。
「ありがとうございます」
礼儀正しい。
結衣は何となくそう思いながら、デスクの椅子に腰掛けた。
安原はティーカップに手は付けず、学生鞄からバインダーを取り出した。
そこには署名されたかのように名前が集まっている。
「──これは生徒たちの署名です。校長から依頼が断られたときいて、もう一度お願いできないかと集めたものです。どうか調査をしていただけませんか」
安原の言葉は真剣だった。
その表情も真剣そのものであり、何処か切羽詰まっているようにも感じる。
「……いま、学校はひどい状態です。最初はありがちな怪談がいくつかあっただけでした。それが今では毎日変なことが起こっています。みんな不安で、心細い思いをしています」
ナルはなんと言うだろうか。
また容赦なく切り捨てるだろうかと、双子は心配げにナルへと視線を向けた。