第6章 禁じられた遊び
ー渋谷ー
冬の冷たさも辛くなってきた頃。
双子の谷山結衣と麻衣は慌てながらバイト先である『渋谷サイキック・リサーチ』へと駆け込んだ。
「すいません、遅くなりましたー!」
「遅くなりましたー!」
二人は学校の用事で少々遅れてしまった。
返事はないだろうが声をかけてみると、珍しく所長である渋谷一也、ニックネームはナルシストのナルが応接室にいる。
どうやら本を取りに来ていたようだ。
「遅い、お茶!」
来た途端それか。
双子は揃って怒りを覚えながら、自分たちのデスクに荷物を置いた。
そして二人は口を尖らせナルへと文句を言う。
「たまには自分でやってみようとか思わないわけー?」
「自分でも出来るでしょーが!」
「なんのためのバイトだ」
そう言われたらお終いである。
確かにバイトの仕事であると結衣は項垂れ、麻衣は呆れたように返事を投げた。
「へーへー所長サマ!ところでリンさん……は資料室におこもりか」
ナルの助手であるリンは基本的に資料室から出てくる事がない。
遭遇して挨拶したとして彼は素っ気ない返事であり、目を合わせて会話をした事はない気がすると結衣は息を吐く。
だが、最近彼は麻衣に挨拶されたり見たりするとビクつく。
どうやらクリスマスの一件で麻衣を警戒しているのか、それともあれが衝撃すきだのか。
理由を知らない麻衣は結衣に愚痴っていたが、結衣のほうは笑いが込み上げてくる光景である。
「んあ?緑陵高校の校長の名刺だ」
「ホントだ」
「……そういえば、今日の朝刊にも出てたね。緑陵高校の事件」
麻衣と結衣はデスクに置かれている、緑陵高校の校長の名刺を見て今朝の新聞の内容を思い出す。
緑陵高校とは今、ちょっとした話題の中心である高校だ。
理由は学校中で怪事件が多発しているとのこと。
始まりは集団不登校の記事。
不登校の理由は『教室に幽霊が出るから』であり、それ以外も記事にされていた。
「確か……原因不明の食中毒とか密室でのボヤ騒ぎに除霊しようとした生徒と教師が喧嘩して大騒動になったとか……」
結衣はその記事を読んだ時、眉を寄せたのをよく覚えている。
なんとも不思議なことが起きるものだと。