第5章 サイレント・クリスマス
ケンジの骨を下ろす為、教会には足場が組まれていた。
その様子を東條はただ見守り、少し離れた所で法生と結衣とナルも見守っていた。
「あたし、最初に見つけてたんだ」
「え?」
「教会に来た時、あそこ見た時に骸骨があって……彫刻の一種なのかなと思ってたけど……もっと気にしてれば良かった。そしたらもっと早くに見つけたあげれたのにね」
じわりと結衣の瞳に涙が浮かぶ。
涙脆い彼女は泣きそうになってしまっていた。
それはケンジへの感情移入なのかもしれない。
「あんな所で、三十年間見つけてもらえるのを待ってたんだね」
ポロッと彼女の瞳から涙が零れる。
法生はそんな彼女を見て、頭を撫でてやりながら親指の腹で涙を拭った。
「おまえは、やさしーね」
「なにが?」
「いい子だよ」
法生は結衣の頭をもう一度撫でてやりながら、ケンジがいた場所を見上げた。
「……どうやってあんなとこに登ったんだろうな」
「当時は足場があったんだ。工事中で」
「ああ──そっか」
「ここやったんですか」
ジョンがこちらに駆け寄ってきていた。
「おう。麻衣は?」
「まだ寝てはります。憑依されてたので疲れはったんでしょう」
「……ねえ、ジョン。憑依された後の記憶って麻衣にもないのかな?」
「おそらく、ないと思いはります」
「……そっか」
そういうものなのか。
結衣は息を少し吐き出しながら、目元に浮かぶ涙を手の甲で拭った。
「……なんで、あんなとこにいてたんでしょう」
「たぶん、それが彼のスタイルだったんだろうな。そもそも人間は高い場所のことは眼中にない。あおむかないと視野に入らない場所というのは、意外に見ていないものなんだ。とくに隠れた誰かを探すとなれば、まず何かの後ろや中を探す」
「……じっさい、麻衣の足下を必死に坂してたんだもんな」
「……今回はたまたま木の上に隠れたのかもしれない。だが彼が憑依した子供が見つからなかったためしがなかったことから考えても……彼は高い場所が鬼の盲点になることを知っていて、つねに高い場所に隠れていた可能性が高いと思ったんだ」
「ああ……そんで上を見回したら見つけたってわけだ」