第5章 サイレント・クリスマス
自分の体温を移すように、そして喜びを顕にするように。
そして麻衣(ケンジ)の背中を撫でてから離れると、視線の先程でナルとリンがこちらに歩いてくるのが見えた。
「見つかったのか?」
リンの姿を見た結衣と、ナルの声を聞いた法生は嫌な予感がなんとなくした。
麻衣(ケンジ)は肩にかけられていた法生の上着を飛ばして、勢いよくリンに抱き着いたのである。
その光景に法生はふらりとして、結衣は引き攣った笑みを浮かべた。
「ああああ、もうっ!!!またフリダシだわよ!どうしたらええの、ジョンさん!?結衣ちゃん!?」
「お、おちっ、おちついて」
「あたしだってどうすればいいのか聞きたいよぉ……」
愛しの妹がリンに抱き着いている。
なんとも言えない気分にさせられていると思っていると、ナルが何故か教会の上に掘られている像を見上げているのに気が付いた。
(どこ見てんだか……)
あんな上の方を見てどうしたというのか。
そう思いながら結衣は落ちた法生の上着を拾い上げ、砂埃を叩いて落とす。
「はい。せっかく貸してくれたのにごめんね」
「良いよ、別に。──ナルちゃんよー、見つけてほしいんじゃなかったのか?ちゃんと見つけたぞ。ケンジのほうから出てきたわけでもねえ。なのに──」
なのに彼は麻衣に憑依したまま。
そう法生が言おうとした時、ナルの言葉がそれを遮った。
「……見つけた」
「は?」
「なにを?」
ナルはゆっくりと腕を上げて、教会の建物上に掘られた像を指さした。
「……なにを見つけたって?そこならさっきおれも見たけど、べつに変わったもんは……」
ナルが指さした方向を見て、彼以外の全員が目を見張った。
像の影に隠れるかのように、そこには骸骨があったのだ。
(……彫刻の一種だと思ってた)
だけど違った。
あそこにケンジはいたのだ……三十年間もずっと。
「……あんな、ところに……」
「ケンジくん、ずっとあそこに……」
麻衣に憑依しているケンジはリンに微笑むと、彼の傍から離れてナルの元に駆け寄る。
そして彼のコートの裾を掴むと小さく告げた。
「ありがとう」
柔らかく微笑んだ彼は、麻衣から離れて次こそは成仏した。
そして憑依されていた麻衣は意識失い倒れそうになり、法生が支える。