第5章 サイレント・クリスマス
(……へえ。よく見ると自分たちの目線より上ってのは眼中にないんだな)
礼拝堂を探し回っている子供たちは、自分より目線が下や目線の高さが丁度の場所を探していた。
そんな彼らに法生は喉を鳴らして笑う。
「あれじゃ、探してんだかなんだか……」
そこて不意に気が付いた。
「結衣、ジョン!高い場所だ。ぜんぜん探してない!」
「高い場所……?」
「子供たちはさっきからおれ達が探した場所しか探してない。だけど同じ場所でもあいつらの見てない場所があるんだ。おれたちの目線の高さだよ!」
その言葉に結衣とジョンも視線を上にあげる。
そういえば、自分たちはぜんぜん高い位置を探していなかったと思いながら。
「自分たちの目線より上の高さは頭にないんだ。おれたちも同じ上のほうは見てない」
「……そやったら、外もそうなんちゃいますか!?」
ジョンの言葉に三人は外へと飛び出した。
だがいくら上を探してもやはり麻衣の姿はなく、徐々に辺りは暗くなり始めていた。
探し回り、一度三人は集まる。
報告をしあって麻衣が居ないことを伝えあった。
「……いないな。しっかし、上っていっても……」
「木の上はどないですやろか」
「……木登り」
「木、ねぇ……のぼれっかな」
「ボク、あっちの端から見てみます」
「じゃあ、あたしはあっちから」
手分けして木の上を見ていこうとした時であった。
「──麻衣さん!」
「って、いきなりビンゴかい!?」
「いたの!?」
ジョンが見上げる木の元に結衣と法生は走り、木の上を見上げるとそこには麻衣の姿があった。
取り敢えずと法生が降りるように呼びかけると、麻衣(ケンジ)は大人しく降りてくる。
寒さのせいだろう。
顔は真っ青になっていて、安堵から麻衣を抱き締めた結衣は身体の冷たさに驚いてしまった。
「──まーったく!こんなんなるまで隠れてるこたないだろうが!顔真っ青にしてー!これで気がすんだろ、ん?」
法生が麻衣の顔を覗き込む。
彼女の中にいるケンジは困ったような、なんとも言えない表情で法生を見た。
「でも、取り敢えず見つけれてよかった」
結衣は嬉しげにしながらも、困ったように眉を下げて法生の上着を掛けられた麻衣(ケンジ)をもう一度抱き締めた。