第5章 サイレント・クリスマス
おじちゃんと呼ばれたことを、さらっと修正する法生の後ろ姿を見て結衣は苦笑する。
すると後ろから両手を誰かに繋がれて振り返ると、ケーキのラッピングをした時に髪の毛にリボンを付けてくれた男の子達がいた。
「さがす、おねーちゃんはおねーちゃんのたいせつなひと?」
「……うん、大切な人」
「じゃあ、いっしょうけんめい、さがすね!」
「ありがとう」
一方、法生は子供たちに群がられてプロレスのようになっていて、それを見た結衣はまたもや苦笑する。
「こーらー!プロレスじゃないでしょー、かくれんぼでしょー!」
叫ぶ法生に子供たちは悲鳴をあげて走っていき、ジョンはというと女の子たちに振り回されていて目を回している。
楽しそうと思いながらも、振り回されている年上の彼らに結衣は笑いが込み上げてくる。
麻衣が行方不明になり、焦りと不安でいっぱいだった。
だがこの光景で笑える余裕が少しだけ出てきたのである。
「なあに笑ってんの、結衣ちゃんや」
「いやあ、楽しそーだなぁって」
「たくっ。人懐っこいつーか、遠慮がないっつーか……だいじょうぶか?ジョン」
「はあ……。きっとみんな寂しんやないかと思います。元気そうに見えるけど、親と長いこと離れとるわけですし」
「そりゃそうか……」
ふと、法生が言葉を途切れさせて固まる。
そんな彼を結衣は首を傾げながら、子供たちへと視線を向けて微笑む。
楽しげに探している姿は、幼い頃を思い出す。
自分も麻衣もよくああやって隠れんぼをして遊んでいたなと。
「──ってことはなに?おれもおとーさんみたいなもん!?」
「や、ないですやろか……」
「歳的にそーじゃない?」
「おれまだ若いです!!」
「自分でおじさんって言ってんじゃん」
なんで騒いでいれば、背後にいたナルに二人は睨まれた。
「やりますやります、マジメに!」
「探しますんで睨まないで!」
ナルに睨まれながらも、二人は子供たちの様子を見守る。
そんな中で一人の少年が掃除用具入れを開けてから中を探している。
(やっぱおれらが見たのと同じとこさがすよなー)
少年は自分の目線が向く所だけを探して、いないと確認すると扉を閉めてしまった。
法生はそんな少年に微笑む。