第5章 サイレント・クリスマス
「どうしても鬼が見つけられなくて『降参』っていっても出てこなかったり……いま思うと皆が隠れ家のそばをうろうろしていて出られなかったんでしょうね。全員が見つかったあとでやっと、ケンジくんのほうから出てくるんですよ。その時のケンジくんの誇らしげな顔……いまでもよく覚えてます」
その話を聞いて結衣と法生は『わかる気がする』と心で呟いていた。
一等賞を貰えたような、そんな気持ちだったのだろうと。
「ゲームのコートは敷地内でしたか?」
「そうです。外に出るのは反則でしたから」
「あっ、もしかして隠し部屋とか隠し通路なんてのは……」
「ありませんね」
「うーん。だとしたら何処に隠れてんのかなあ……あちこち探してみたけど、麻衣居なかったしなあ」
困ったという表情で結衣はお茶を飲む。
これが麻衣が憑依さてなくて隠れているのならば、なんとなく隠れ場所はわかるので見つけれたと思う。
(だけど相手はケンジくん。見つけられないなあ……)
早く見つけてあげなければ。
そう思っていると、なにか考え込んでいたナルがソファから立ち上がった。
「東條さん。子供たちをお借りできますか」
「どーすんのよ、ナルちゃん」
「子供たち借りてどーするの?」
「子供たちに探してもらう」
「……かくれんぼの再現ってことか?でも子供達はケンジを見つけられ……」
「だから、探す子ども達の後をついていくんだ。子供達が探すような場所にはケンジくんはいない」
ナルの言葉に、結衣と法生とジョンは目を見開いた。
「そーいうこと!」
「お子らがさがしてへん場所をさがすんですね?」
「さっすが!かしこくていらっしゃる」
「いそごう」
そうして、東條は子供たちを礼拝堂に集めた。
集められた子供達は最初戸惑っていたが、法生による説明を受けて徐々に笑顔が増える。
「──ってわけで、みんなにそのおねーさんを見つけて欲しいと思いまーす。わかったー?」
法生の言葉に、言葉たちは元気よく返事をする。
「はーい、そんじゃスタート」
走り出した子供たちを、ジョンと結衣は慌てて追い掛ける。
法生というと、一人の小さな女の子に手を繋がれていた。
「おじちゃん、見つけられなかったの?」
「おにいちゃん。そう見つけられなかったんだよ」