第5章 サイレント・クリスマス
じわりと結衣の瞳に涙が浮かぶ。
それは麻衣が居なくなった焦りと共に、ケンジの家に帰りたい気持ちに同情してしまったせいかもしれない。
今泣いてもしかたない。
そう思いながら結衣は必死に我慢していれば、それに気がついた法生が彼女の頭を撫でた。
「大丈夫だって。ちゃんと、おれらが見つけてやる」
「……うん」
「──うしっ、んじゃ、見つけてやろーじゃないの。結衣は麻衣のお姉ちゃんなんだろ?見つけてやろうぜ」
「ん」
乱雑だが結衣は法生の言葉に頷いて、目元に浮かんでいた涙を拭った。
「ジョン。子供たちが隠れていたのはこの敷地内か?」
「やと思います」
「確認してきてくれ。それとあれば教会の図面を……敷地と建物全体を徹底的にさがす」
「ハイッ」
「はやいとこ見つけないと麻衣の体のほうが心配だな。上着も着ないでまったく……」
十二月下旬。
風もかなり冷たく、夕方近い時間でもある。
徐々に風の冷たさも酷くなるため、彼女の身体が心配であった。
「だいじょーぶ。麻衣、体頑丈だから。寒い中でお腹出して寝ても風邪ひかなかったぐらいだもん」
目をほんのり赤くさせながらも結衣は笑った。
それは自分を安心させる為でもあり、法生に心配をかけない為の言葉でもあった。
「そっか」
「それに、あたしと違って寒い中で半ズボン履くぐらいだし?しかもストッキングとかも履かず」
「あれは強いよなあ。結衣は寒がり?」
「寒がりだよ。今だってお腹とかにホッカイロ貼ってるぐらいだもん」
「双子でもそこは違ぇんだな」
「うん。でも、やっぱり心配だからさ……はやく見つけてあげなきゃね」
「そーだな」
二人が意気込んでいるなか、ナルは相変わらずの無表情でどこかに歩き出していた。
「期待してるぞ、ぼーさん」
「おう、まかしんさい!……って年寄りにまかすな若者!あたしゃもう折り返し地点よー!」
「ナルも手伝ってよ!可愛い部下が心配じゃないのかー!」
法生と結衣に文句を言われ、ナルも渋々と言わんばかりの表情で麻衣の捜索に参加した。
それから、メンバーは各自色んな場所を探した。
隣の敷地を覗いたり、用具入れを開けたり、教会の礼拝堂の椅子の下を探したり。