第5章 サイレント・クリスマス
「……あー」
リンの言葉に、法生はなんと言えばいいのかと悩む。
すると、騒ぎを聞きつけたのか何処からかナルが姿を表した。
「どうした」
「わりィ、ナル坊。麻衣が逃げた。リンが切れちまって、怒ったら飛び出してったんだ」
「──おとなげのない」
「だから、なにが──」
ふと、物を叩く強い音が響いてきた。
それはケンジの怒りをあらわにしているようで、激しくて強い音である。
「この音、ケンジくんの……」
「──怒らせちまったか。麻衣──!」
おとうさん
おとうさん、またぼくをおいていくの?
『なるべくはやく迎えに来るから、神父さんのいうことをきいていい子にしてろよ』
はやくってどれくらい?
あした?
あさって?
『……じゃあな、ケンジ』
──いいこにするよ
いいこにしてるから
はやくむかえにきてよ
おとうさん……!!
数分後、ケンジが鳴らす音が鳴り止んだ。
「──音がやんだな……」
「麻衣さんどこにいかはったんでしょう」
「……麻衣。どうしよう、麻衣になにかあったら……」
結衣の顔は徐々に青ざめていた。
もし、麻衣の身になにかあれば正気ではいられない。
思わず彼女は自分の顔を手で多い、身体を屈めてしまう。
そんな結衣の背中を法生は摩りながら、ある一つの事を思い出した。
「まさか」
「ぼ、ぼーさん!?」
走り出した法生を結衣達は追いかけた。
彼が向かったのは水路であり、彼はすぐさまフェンスから身を乗り出した。
「麻衣!?」
「どうだ」
「いない。水路にも落ちてない」
その事に、結衣とジョンは安堵する。
それがいい事なのか悪かったことなのか分からないが。
「どうしよう……」
「結衣、麻衣が隠れるとしたら何処に隠れそうとかあるか?」
「……でも、今麻衣の中にいるのはケンジくんじゃん?麻衣が隠れそうなところ探しても、意味無いと思う」
「あー……確かにそうだな」
「……出てくるよね、麻衣……」
「……これまでの例からしたら、しばらくしたら出てくるはずですけど……ケンジくんが合図にあんなごっつい音をたてたゆう話はきいたことおまへん」
「いったい、どういうことですか?」