第5章 サイレント・クリスマス
ちらりと、法生が親子たちの方を見ると麻衣(ケンジ)はやる気満々でリンを巻き込んで席に座っていた。
「おっけー。やる気まんまんなのね」
「あっは!いいね、いいね」
「お前は急に元気になったな。さっきまで妹に無視されたって泣いてたのに」
「いやあ……あれがケンジくんだって思えばなんとかなったかな?」
「切り替え早いな。ま、いい事だけどな」
そんな会話をしている二人と、リンと麻衣(ケンジ)を見たスタッフは困ったように東條を見た。
東條はそんな二人に笑みを浮かべながらも、頷いてみせる。
「そう……じゃあね、このケーキをホイルで包んでからラッピングするの。できる?」
スタッフの問に麻衣(ケンジ)はにっこりと微笑んだ。
「今のところ、だいじょうぶそうだね」
「だな。んじゃ、おれたちも始めるかー」
ケーキのラッピングは、教会のほかの子供たち数人も参加してきた。
ジョンは子供たちに指摘されながらも、苦戦してラッピングをしていて、法生は女の子達の髪の毛にリボンを結んであげる。
結衣は、男の子達に囲まれて法生の真似した彼らに髪の毛をリボンで結んでもらっていた。
「おねーちゃん、にあう!」
「ほんとー?可愛くしてもらって、嬉しいな」
「かわいいー!」
「ありがとー!」
嬉しげにリボンを揺らす結衣を見ていた法生は、自然と柔らかい笑みを浮かべていた。
赤いリボンがよく似合っていて、たいへん可愛らしい姿であり和んでしまう。
(いいな、可愛い可愛い)
一方、リンと麻衣(ケンジ)。
二人は目の前にあるお手本を見ながらしていたが、リンは少々苦戦していた。
そして麻衣(ケンジ)はリンが見本と違うと指摘して、リボンを解いてやり直しと渡す。
「あーあー……」
それを見て結衣は苦笑し、法生は吹き出して、リンは魂が抜け出しそうになっていた。
暫くして。
ケーキのラッピングが終わり、ケーキは山のように置かれていた。
「おしっ、完成ー♡後片付けはやっとくから遊んでていいぞー」
法生の言葉に子供達は嬉しげにはしゃぐ。
その中にはもちろん麻衣(ケンジ)も含まれていて、リンの腕を掴んで部屋を出ていく。
「結衣も遊んできてもいいぞ」
「うーん。あたしはこっちにいようかな。邪魔するのもあれだし」