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ハツコイソウ【ゴーストハント/滝川法生】

第5章 サイレント・クリスマス


「なんじゃい」


法生が姿を表したのである。
その事に双子は驚いて後ろに転けそうになってしまう。
てっきり用水路に落ちたのと思っていたが、もう一度身を乗り出して見るとそこには地面があったのだ。


「あ、地面がある……」

「なーんだ……」


囲いと用水路の間には狭いが地面がある。
法生はそこに飛び降りたのだ。


「そ。まあ、こーゆーことだろうな。ここに隠れようとするわけよ」

「ええ!?子どもじゃ登れないよ、こんなの」

「あたしと麻衣も登れるかどうか分かんないのに」

「当時、ここは工事中だったわけだろ?てことは木材とかが積んであったんじゃねえかな」

「……足場があったゆうことですね?」


それならば、やんちゃな子どもは登ってしまう。
当時法生の言葉通り、木材などの足場があれば子どもは隠れようと登ってしまうはずだと結衣は納得した。


「囲いによじ登る、でもってここに隠れる。隠れようとして、落ちる」

「……登る時に塀で胸をこすってホイッスルを落とす?」

「だろうな」

「……だから、ホイッスルがここに落ちてたのかな」


当時ならちょうど十二月だった頃。
水は冷たく、子供なら耐えれるかどうか分からないはず。
双子はそう考えで、また二人揃って悲しげに眉を下げていた。


「どうよ、ナルちゃん」


一方ナルは東條から受け取った見取り図を眺めていて、壁に背を預けていた。


「ありそうだが、推測でしかないな」

「……冷たかっただろうなあ。かわいそ……」

「そうだね」


今にも泣き出しそうな結衣と、辛そうに眉を下げてしまっている麻衣。
そんな双子に法生は苦笑を浮かべてから、二人の頭を雑に撫で回した。


「嬢ちゃんたちも気ぃつけんなさいよ。かくれんぼするときは安全第一での」

「「するかっ!」」


幾つだと思っているんだ……と双子は怒る。
そんな双子に法生は面白げに笑い、ジョンまでも笑う。
そんな時、探索していた結衣たちと別行動をしていたリンがこちらにやってきた。


「ナル。東條さんが昼食をどうぞ、と」

「ああ」

「あれ、もうお昼ー?」

「もう、そんな時間かー。アタシ、朝食べ損ねたのよねー」

「なにそれ、綾子のマネぇ?」

「綾子に知られたら怒られるよー」
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