第5章 サイレント・クリスマス
「それは、それで可哀想だね」
結衣の呟きに法生は苦笑した。
彼女は感受性が豊かなせいなのか、すぐに感情移入するせいなのか今も何処か泣きそうな表情だ。
どうやら双子の妹の麻衣より感情移入が強いらしく、彼女より泣きそうになっていた。
「おまえさんは、優しい子だねえ」
法生はそう呟きながら、結衣の頭を少し乱雑に撫でた。
「最近、ちょっとだけですけど頻繁になってる感じがするのんです。それで渋谷さんらに手を貸してもろたほうがええんやないかと」
「お願いします」
「了解しました」
まず、結衣達はケンジのホイッスルが落ちていた場所という所に向かうことにした。
そこに何かあるかもしれない……というナルの考えであった。
「そこです。そこの囲いの中にホイッスルが落ちてたんやそうです」
囲いの中は少し焦げている。
何かを焼いたような痕跡が残っていて、どうやら焼却炉のように使っていたようだ。
「ふーん……焼却炉みたいなもんか。あー、これが例の水路ね。けっこー深いなあ」
「深いの?あたしぎり見えないんだが……」
「ちょうど結衣の身長よりちょい低いぐらいか」
すると麻衣が結衣を呼んだので、彼女は法生の傍を離れてしまった。
そんな彼女を視線で追っていた法生は、すぐに囲いとして作られているコンクリートの壁と自身の高さを比べた。
ちょうど、法生の胸ぐらいの高さだ。
「それより、ケンジくんって何処に隠れちゃったのかなあ」
「確かにね。何処に行っちゃったのかな」
双子が揃って同じ事を考えで首を捻っていれば、背後から『よっ』という法生の声がした。
なんだろうと双子が後ろを振り向けば、法生は囲いの上に登っていたのである。
「ぼーさん!危ないよー!」
「落ちちゃうよー!降りなよー!」
声をかけたが返事は無い。
結衣は溜息を吐き出し、法生の元に歩いていた時だ。
なんと彼は飛び降りてしまったのだ。
「ぼーさああああん!!??」
「ギャーーッ!とびとりたーっっっ!!!」
慌てた双子は駆け寄ると、囲いから身を乗り出した。
「「ぼーさんっ!!?」」
身を乗り出した双子にジョンが慌てて『あぶないっ!』と叫んだ時である。