第1章 悪霊がいっぱい!?
「赤外線カメラと超高感度カメラは暗い所を撮影するのに使う。サーモ・グラフィーは熱感カメラといって温度を移すカメラだ」
「「ほえー……」」
「ついでに教えておくが、サーモ・グラフィーでは温度を調べる。霊が現れるとそこだけ温度が低くなるんだ」
「あー、よく言うね」
「ほいほい」
「わかったらくだらない質問をやめて、とっとと働け!」
「「はいっ!」」
怒鳴られた二人は慌てて機材を並べ、その後ナルに支持されてデジタル温度計を手にして校舎内の気温を測りに行かされた。
「薄暗い旧校舎の中で、手分けして温度を測るとか……嫌なんですけどぉぉ」
結衣は泣きたい気分でデジタル温度計と、それを記録するバインダーを手にしてナルが待っている教室へと急いだ。
遅くなるとまだ怒号が飛んでくるはずだ。
そう思っていれば、パタパタと足音が聞こえてきた。
不意に足を止めてしまった結衣は息を飲んでから、その足音の方へと視線を向ける。
「あ、結衣!そっち終わったー?」
「な、な、なんだ……麻衣か、そうだよね、麻衣だよね」
「どったの?」
「なんでもないやい」
怖がって損したという気分で、二人はナルの元へと戻った。
「ただいま戻りましたー」
「ただいまっ。いわれたとおり2人で教室ごとの温度測ってきたよ。便利だねーこのデジタル温度計」
「はいよ」
二人はナルにバインダーを手渡す。
手渡されたナルはそれをじっと見ながら呟いた。
「異常はないな。特に低い場所はない。強いていえば一階の奥の部屋が低いが……問題になるほどの温度じゃない」
「じゃ、霊はいないってコト?」
「まだわからない。霊はシャイだから。心霊現象は部外者が来ると一時的に治まるのが普通なんだ。とにかくこれじゃターゲットの決めようがないな。とりあえず……一階と二階の廊下に四台、玄関に一台、暗視カメラを置いてみよう」
ナルの言葉に二人は『げー!』と顔を顰めた。
だが文句なんて言える訳もなく、とてつもなく重いカメラを二人で手分けして運んで言われた通りの場所に設置した。
設置し終えた頃には、外はもう茜色。
足腰は痛みを訴えてきていて、二人は腰をさすっていた。
「あっ、あでででで」
「いだだだ……」