第1章 悪霊がいっぱい!?
「なんで?」
「……僕は素人と話をするのはきらいだ」
あからさまな『鬱陶しい』という表情と、棘がある言葉。
だが麻衣はそんな事で泣くような子ではなく、ムッとした表情でナルを睨んだ。
「あたしが素人なのはわかり切ったことだろ。モンクあんなら手伝わねーぞ!」
「そーだ!そーだ!素人に手伝わせるなら説明しろー」
背後で結衣が援護射撃する。
するとナルは如何にも面倒臭そうに説明を始めた。
「……ラップ音や変な音がしないか調べるんだ。今日一日窓の外から一階の音を拾ってみた」
「あ、さっきのマイクでだね」
「なるほど。だからあんな大きなマイクを校舎側に向けて置いてたわけだ」
「そうだ。今夜は室内にレコーダーをセットしてみる」
「泊まりこんだりとかしないの?」
「今日はまだしない。霊がいるとしたらどの程度のものか確かめてからだ」
以外にも用心深いのか。
結衣はそう思いながらダンボールから機材を取り出しているナルの手元を覗き込む。
「石橋を叩いて渡るタイプなんだー」
「なに?」
「用心深いんだね」
「当然だ。幽霊屋敷(ホーンテッド・ハウス)にはとてつもなく危険なものがある。下手に手出すると取り返しがつかない」
想像をして結衣は身体を震わせた。
「……お、脅かさないでよ」
「そ、そうだよ。と、あれ?こ、これは?」
「あっ、こっ、これは?」
話を逸らそうと二人は足元にあったカメラのような機材を見るが、ナルは二人に背を向けたまま。
「おまえ達と話をしたくない」
拒絶と捉えられる言葉と態度に、二人はむかっ腹を立てる。
「……へー、あーそう、そうですかー」
「いいよー。そのかわり、無知だからとんっでもないミスするかもねー。おーっと、このカメラみたいなのは踏み台かなー?」
「分からないから踏んでもしょうがないよね〜」
双子はそう言いながら足元にあるカメラに足を近づける。
「ばっ……!」
今にも踏みそうな二人にナルは珍しく慌てた様子を見せた。
そしてじりじりと睨み合うと、ナルの方が降参する。
「……赤外線カメラ。聞かれるまえにいっておくが、こっちはサーモ・グラフィー。これが超高感度カメラ」
ナルは一つ一つ二人に説明を始めた。
いちいち聞かれるのが面倒だからだろう。