第1章 悪霊がいっぱい!?
「ただし、作業員が死んだという事実は無い」
「え!?そ、そうなんだ……」
「ああ。怪我人は五人ばかり出たが原因は業務上のミス」
それじゃあ、あの噂はデマということになる。
その事に少しだけ結衣と麻衣は安堵の息を吐き出した。
「工事は当初の予定どおり三分の一を取り壊して終了。その後……今から六年前だが旧校舎で子どもの死体が見つかっている。近所に住む七歳の女の子だ。これは営利目的の誘拐だった。犯人は一ヶ月後に逮捕されている」
小さな子が亡くなっているという事実を聞き、結衣は胸がきゅぅと締まるような感覚を覚えた。
そんな小さな子が誘拐されて殺されてしまっていたなんて……と。
そんな結衣の気持ちを露知らず、渋谷は淡々と抑揚のない口調で説明を続けた。
「……自殺した教師もたしかにいるが、これはノイローゼが原因。遺書があったんだ」
「……すごーい。よく調べたねえ」
「ほんと、すごいよ。よくここまで調べられたねえ」
双子が関心するが、渋谷は『当たり前だ』という表情。
「当然だ。僕の情報収集能力をバカにしてもらっては困る」
「いや、別に馬鹿にはしてないけどさ……ねぇ、麻衣」
「うん。ところで“トラックの暴走”は?」
麻衣の問に、渋谷は無言で一枚の印刷された新聞の記事を差し出す。
それを結衣は横から覗き見、文字を読んでいく。
『瓦礫を積んだトラックが突然暴走、バレーコートに激突した。校庭では体育の授業が行われており、生徒七名が重軽傷、二名が死亡するという惨事となった。トラックの運転手は飲酒しておりーー』
「この時はさすがに工事は中止された。例の噂のせいもあったそうだが……」
新聞紙には亡くなった二人の生徒の顔写真が載っていた。
結衣と麻衣の先輩となる人達、若くして命を奪われてしまった二人の生徒に結衣はまた胸が苦しくなった。
「調べて限りではどれも噂の域は出ないな。不吉だなんだというわりにどの事故も原因がはっきりしている。僕はそんなに大した事件ではないとふんでるんだが」
そう言いながら渋谷はベンチから立ち上がる。
そんな彼に麻衣が声をかけた。
「あっ、あのぅ……。あたし達どうしても手伝わなきゃだ……めなのね、やっぱ……」