第4章 放課後の呪者
双子は交互に怒りながら叫ぶ。
その声にナルは煩わしそうにしながら、深く息を吐き出した。
先日のこと。
渋谷サイキック・リサーチことSPRに、女子高生がとある依頼を持ち込んだのである。
「──先月……学校で友だちがコックリさんをしてるのを見てたんですけど、そのときいっしょに見てた子のようすがおかしくなっちゃって……」
不安げにスカートを握りしめながら、女子高生は様子がおかしくなったという子の話をナル達に話した。
「授業中に机の上に飛び乗ったり、体育のとき砂場の砂を食べたり……それでキツネに憑かれたんじゃないかって──」
そんな依頼を、ナルはばっさりと断ったのである。
その時に双子たちは怒り狂ったのをよく覚えていた。
「あれは医者の管轄だと思ったから、そういっただけだ」
「もうちょっもいいかたがあるでしょ?せめて、ほかにだれか紹介するとか」
「もう少し考慮してあげなよっ!」
「おーっす」
双子が声を張り上げた時、それを割って入るように聞き覚えのある声が聞こえた。
それと同時にドアベルが応接室に響く。
たまに喫茶店替わりに来るメンバーの一人だ。
双子はそう思い、扉の方に視線を向けて驚愕してしまった。
「ナルちゃん、やっほー♡」
派手なハットに派手な上着、そしてサングラス姿。
思わず結衣は自分の目を擦り、天井を見上げてからその御仁へと視線を向け直す。
「いやー日曜の渋谷なんてくるもんじゃないね。あっ、結衣ちゃん麻衣ちゃん。アイスコーヒーちょうだい♡」
その御仁は一人でペラペラと喋ると、ナルの目の前のソファに勢いよく腰掛ける。
双子は目を見開かせながら、お互いの顔を見る。
それからその御仁へと視線を向け、結衣は震える声で訊ねた。
「ぼ、ぼーさん……?」
「おー!どしたー?」
「ど、どしたの……そのカッコ……」
帽子とサングラスを取った御仁は、滝川法生であった。
見慣れない派手な装いに双子たちは驚きを隠せずにいたが、ナルだけは無反応である。
そんな双子達に法生は笑いながら『かわいー?』なんてのほほんと言う。
「あ、これ?きょうバイトだったのよ」
「バイトって……?」
「カウボーイ?」
「なわけないでしょ、結衣ちゃんや。バックバンドだよ」