第3章 公園の怪談!?
「そ、そうだよ。仕事でもないのに……」
「そんなことございませんわよ。あたくし、何度かごいっしょしましたもの。映画やコンサートに」
まさかの事実に全員が目を見開かせた。
あのナルが、まさかの真砂子と一緒に映画やコンサートに行っていたなんて。
結衣は目を見開かせながらも、麻衣へと視線を送る。
彼女は冷や汗のようなものを浮かべながら、固まってしまっていた。
「ま……」
名前を呼ぼうとし、それがナルの声で遮られた。
応接室の騒がしさに耐えきれなくなったのか、怒りを顕にしながら出てきたのである。
「いいかげんにしてもらえませんか。ここを喫茶店がわりにするなと、何度……」
「こんにちは」
ナルは真砂子の姿を視界に入れると、言葉を途切れさせた。
暫く何かを考えているような雰囲気を出すと、双子に声をかける。
「──麻衣、結衣。ぼくはちょっと出てくる」
そう言うと、上着を手に取る。
「でしたら、おともしますわ」
「けっこうです。ごゆっくり」
キッパリと断ったナルだが、そんな彼の腕に真砂子は自分の手を絡めたのである。
「ごいっしょさせてくださいませ」
まさかの行動に、麻衣は怒りの鬼となりかけていた。
そんな双子の妹に結衣はオロオロしながらも、彼女とナルと真砂子を交互に見る。
何か嫌味を言うだろう。
全員がそう思っている中で、ナルは溜息を吐き出すと何も言わずに扉の向こうに行ってしまう。
「ごめんあそばせ」
にこやかに笑いながら去っていく真砂子と、無言のナル。
そんな二人を応接間にいた全員は唖然として見送ってしまった。
「い、行っちゃった……」
静寂の中で結衣だけの声が響く。
「……なあ、結衣、麻衣。ナルは真砂子に弱みでも握られてんのか?」
「弱みぃ!?ナルに?」
「弱みなんてあんの、まずナルに!?」
「いや、だって、いまの……こ、こないだの仕事の件とかさ」
双子の反応に法生は驚いてしまいながらも、先日の件を出す。
だが確かにと結衣は真砂子の依頼を断らなかったナルの様子を思い出した。
「そういえば、渋谷さんらしくないですね」
「だろー?なあ、まえからききたかったんだけど、ナルってほんとにここの所長なのか?」