第2章 人形の家
結衣はそう思いながら、麻衣は怒りを感じたようにしながら真砂子を見ていた。
「……除霊には二つありますの。除霊と浄霊……」
「何が違うの?」
「浄霊は霊に語りかけ、この世へのこだわりを解いてやるんです。でも、これは霊媒にしかできない……ナルは霊媒じゃないのですもの。……除霊をするつもりなのですわ」
「除霊……」
「悪い人間が……いたとしますでしょ?説得して改心させるのが浄霊。ウムをいわさず殺してしまうのが除霊ですわ。除霊はしてほしくありませんわ。すくなくとも、あたくしの目の前では……」
真砂子は霊が見える体質である。
そしておそらく真砂子は霊も人間も同じように見える、つまり……殺されているように見えるのだ。
(そうだよね、嫌に決まってるよね……)
眉を寄せた瞬間だった。
双子が何かに引っ張られて、床に倒れ込んだ。
「いっ!?」
「きゃ……!」
「結衣、麻衣!」
真砂子が双子の名を叫び、慌てて二人に駆け寄る。
「……だ、だいじょうぶ」
「だいじょうぶだよ、真砂子」
二人は誰かに引っ張られていた。
おそらくそれは子どもたちの霊なのだろう。
徐々に居間の気温が下がっているのも分かった。
「──初めに言があった。その言は 初めに神とともにあった」
「原さん、どうです?」
「……にげまとまっていますわ。ずいぶん、数がへりました。居間の外へにげていきます!……泣きながら……」
子ども達は苦しんでいるのだ。
ジョンの祈祷に苦しんで、逃げ惑っているのだと双子は分かった。
「ねえ、子供たちを浄霊できないの?」
「ムリですわ。あの女がいるかぎりは……」
ビクリと真砂子の身体が跳ねた。
そして井戸を見るなり、青ざめていき口を手で塞いでいる。
「真砂子?」
「どうしたの?」
「でてくる……!」
井戸の中から水の音が聞こえてくる。
そして徐々に井戸から女の姿が見え、結衣達は恐怖で言葉を詰まらせた。
女はついに井戸から姿を現した。
夢で見た、髪や着物が乱れた姿の女が、結衣たちの目の前に現れる。
「──……富子さんはいません!地上をさがしてもどこにもいませんのよ!」
真砂子は女へと声を張って叫んだ。