第2章 人形の家
綾子の言葉は、麻衣の言った通りの意味を持っている。
自分たちの身を考えるという事は、礼美を見捨てるということであるのだ。
「……ヘタしたらこっちまで、地縛霊にされそうだしなあ」
「ぼーさんまで!」
「そんな……!」
双子が喚くように叫んだ時、それを制止するようにナルが双子の名を呼んだ。
「麻衣、結衣。帰りたいならご自由に。そのていどの霊能者なら必要ない」
ナルの冷たい一言に、法生や綾子たちは言葉を詰まらせる。
「……ほんとうに勝算はあるのか?」
「信じる、信じないはごかってに」
法生と綾子は顔を見合わせた。
そして双子たちは不安げに二人を見守っていた。
「……ナルちゃんを信じてもうすこし、オノレを酷使してみるか。なんかあってブッたおれたらそこまでだ」
「骨ぐらいは拾ってあげるわよ」
「神道で葬式だされちゃ、死ぬに死ねねぇよ」
二人の言葉に双子達は安堵した。
法生と綾子は礼美を見捨てない……その事に結衣が喜んでいれば、法生がため息を吐き出して彼女の額を指で弾く。
「いっだぁ!?」
「なぁーに、喜んでんだよ」
「だ、だって、礼美ちゃんのこと見捨て無かったから……」
「見捨てねぇよ。おれも、そこまで酷い大人じゃありませーん。つーか、オマエ井戸に落ちたんだろう?ベースにいろって言ったのに……」
ヤレヤレと法生は結衣の両頬を摘む。
痛みはない、優しい摘み方であり結衣は言葉を詰まらせながら明後日の方向を見る。
「麻衣も落ちたんだろう?怪我は?」
「ちょっと膝擦りむいたぐらい。でも結衣、頭ぶつけてるんだよ」
「はあ?平気なのかよ、結衣」
「タンコブだよ」
「無茶するなよ、たく〜」
法生は苦笑を浮かべながらも結衣の頭を撫でられ、彼女はその心地良さに目を細める。
痛かったり、怖かったりしたが、法生に撫でられたり言葉をかけられただけで気持ちは落ち着いていく。
(我ながら現金なヤツだよね……)
その後、ナル達は除霊についての作戦会議を始めた。
「とにかく、手下の数が多すぎる。問題はあの女だ。女を引きずり出さなければ意味がない」
「で、どうすりゃいい」