第10章 ハロウィンの大惨事
それから授業を受けたが、ハリーは箒のことで頭がいっぱいで、どうしても授業に集中できていない様子だった。チユも、得意な呪文学と変身術以外の授業では、ほとんど居眠りをして過ごしてしまった。
夕食を終え、ハリーがクィディッチの練習に出かけると、チユは自室に戻り、床に広げた魔法薬学の教科書に目を落とし、大鍋を手に取った。彼女は一度深く息を吸い込み、気持ちを落ち着けてから、慎重に調合を始めた。
「すり鉢に蛇の牙6本を入れ、砕いて粉にする……それから、大鍋に4計量分の砕いた蛇の牙を入れてっと。」
だが、大鍋の中身はすぐに奇妙な色合いを帯び、見るからに失敗する予感がした。チユは眉をひそめ、深いため息をついた。
「ダメだ、教科書通りにやっているのに……この教科書、間違えてるんじゃ…」
何度試しても、思うような結果にはならなかった。
ホグワーツに来てから毎晩こうして調合を続けているが、最も簡単な『おでき治療薬』ですらうまく作れない。
ロンには「君がいるおかげで、スネイプに叱られなくて済むよ」と冗談を言われるほど、魔法薬学の授業ではとんでもない失敗ばかりが続いていた。
彼女の調合はまるで呪いのようにうまくいかない。
自分の力不足に対する焦りと無力感が、チユの胸に重くのしかかる。
「こんな調子じゃ、脱狼薬なんて作れるはずがない……」
『脱狼薬』は非常に難易度の高い薬で、調合の難しさだけでなく、材料の入手も極めて困難だ。それに、まだ1年生の自分には到底無理だろうと、心の中で自嘲的な考えが頭をよぎる。しかし、リーマスのことを思うと、どうしても諦めるわけにはいかなかった。
彼が温かく手を差し伸べてくれたからこそ、今の自分がいる。彼の優しさにどうしても応えたくて、少しでも楽にしてあげたくて、その想いがチユの胸を締め付ける。リーマスに恩返しをしたい――その一心で、どんなに手間取っても、失敗しても、諦めることはできなかった。
ホグワーツを卒業する頃には、絶対に『脱狼薬』を作れるようになりたい。そう心に誓いながら、チユは再び教科書に目を落とした。瞼が重くなるまで、ただひたすらに薬を調合し続けた。
すべては、彼のために―――。