第9章 眠れないお姫様
「じゃあ、私は自室に戻るね。着替えないと...」チユはドアに向かって歩き出したが、途中で立ち止まり、恥ずかしそうに床を見つめながら肩越しに言った。
「また...眠れなくなったら...ここに来てもいい?」
その言葉を口にした瞬間、チユは思わず顔を赤くして目をそらした。自分でもどうしてこんなに恥ずかしいのかよくわからなかったが、誰かを頼ることに少しだけ気後れを感じていた。しかし、それと同時に、心のどこかでその言葉を求めていた自分に気づいていた。
「「いつでも歓迎するぜ!」」
双子は立ち上がり、まるで長年練習してきたかのように息ぴったりに答えた。
「我々の『ウィーズリー特製・悪夢撃退サービス』は24時間営業だからな!」フレッドが付け加えた。
「料金は笑顔ひとつでいいからね」ジョージが優しく言い、いつもの冗談めいた調子とは少し違う、温かな視線をチユに送った。
チユはその言葉に胸が熱くなるのを感じながら、小さくうなずいた。
「ありがとう」2人の温かな笑顔を見て、これまで1人で抱えていた眠れない夜への恐怖が、少しだけ遠のいたような気がした。